2018.10.15

積水ハウス LDKからの脱却を提案

大空間で幸せな住まい

積水ハウスは戸建住宅の新商品「IS ROY+E Family Suite(イズ・ロイエ ファミリースイート)」を発売、従来のLDKという考え方から脱却し、コンパクトでも大空間を実現する住まいの提案を行う。

住生活研究所の研究成果の第一弾

積水ハウスでは今年8月に新たに「住生活研究所」(河崎由美子所長)を設立。従来の安全・安心、快適性といった観点からだけでなく、「すこやか(健康)」、「つながり」、「私らしさ」、「生きがい」、「楽しさ」、「役立ち」といった価値観からも幸せにつながる住まいを研究し、新商品の設計やソフトサービスの提供などに結びつけていこうとしている。同研究所の研究成果を落とし込んだ住宅商品として開発したのが、今回の「IS ROY+E Family Suite」である。

従来、LDK空間において、リビングは「くつろぎ」、ダイニングは「食事」、キッチンは「調理」といったようにそれぞれ決まった使われ方がされていた。だが、住生活研究所では、LDK空間は暮らし方の多様化により食事、だんらん、くつろぎなど、家族の様々な生活シーンを受け止める場所になっていると考察。このため、「IS ROY+E Family Suite」では、従来のように決まった使われ方をするLDKの発想から脱却する戸建住宅を提案する。

「これまでも脱LDKの考え方に基づいたプランを提案する取り組みはあったが、LDKという考え方自体は残っていた。今回はLDKという考え方自体をなくした」と、河崎由美子所長は話す。

「IS ROY+E Family Suite」では、まず、従来はLDKとされていた1階のスペースに、用途を限定しない家族が集まる大空間「ファミリースイート」を設ける。そのうえで、住まい手と設計者で「ファミリースイート」の使い方を検討していくといったかたちで、設計のプランニングを行っていく。

「1階であれば、南向きの日当たりの良い場所にリビングを、北側にキッチンを配置するといったプランニングが多かった。だが、今回は例えば、食を中心に家族が集まる空間を作りたいという要望があれば、大空間の真ん中にキッチンを置くプランもあり得る。新商品ではとにかく大空間を使って自由にプランニングを行ってほしい。このため、リビングとは呼ばずファミリースイートと呼ぶようにした」と、河崎所長は話す。

積水ハウスは鉄骨2階建て戸建注文住宅の主力商品「イズシリーズ」の新提案として、「IS ROY+E Family Suite 」を発売。新商品を武器に同シリーズの販売の拡大を狙う

オリジナル大断面梁で30坪でも大空間を実現

「ファミリースイート」を実現するために、積水ハウスで標準で使っている梁の約10倍の強度を持つ大断面梁「ダイナミックビーム」を採用。これにより、30坪~40坪の住宅でも、最大スパン7mで無柱の「ファミリースイート」を実現できる。

「ダイナミックビーム」については、2017年4月に開発していたが、「これまで戸建住宅ではプランに落とし込んだかたちで積極的に提案できていなかった」(石井正義 総合住宅研究所長)が、今回の新商品では「ファミリースイート」を実現するための立役者となっている。

家族の心地よい距離感を実現するプランニングも提案

住生活研究所では、研究の結果、家族が一緒にいながらもそれぞれが趣味や作業に集中できるプランニングも、幸せな住まいを実現するための重要な要素の一つと考えた。

このため、家族が心地よい距離感を得られるプランニングも「ファミリースイート」で提案していく。例えば、適度に仕切られた「ワークスペース」などの提案を盛り込む。

一方で、こうしたプランニングについては、従来のよりも高い提案能力が求められることから、豊富な経験を持つ設計士集団や、その中から選び抜かれたトップクリエイター「チーフアーキテクト」の能力を活用していく。

このほか、積水ハウスでは「ファミリースイート」は柱のない大空間であるため、将来的にリノベーションも行いやすいという点も、新商品のメリットとして挙げる。例えば、「ファミリースイート」の一部を両親の寝室にしたり、改修してカフェを経営するといったことも行いやすい。

積水ハウスで標準で使っている梁の約10倍の強度を持つ大断面梁「ダイナミックビーム」を採用。30坪~40坪の住宅でも、最大スパン7mで無柱の「ファミリースイート」を実現できる

従来シリーズから価格は据え置き
鉄骨2階建ての販売拡大へ

「IS ROY+E Family Suite」の価格は、坪当たり69・5万円~(本体のみ・税抜)で、従来よりもコストの掛かるオリジナル大断面梁「ダイナミックビーム」を採用していながら、従来の「イズシリーズ」と同等の価格に抑えている。「ダイナミックビーム」の導入費用は従来より掛かるものの、「ファミリースイート」により間仕切りが不要でシンプルな構造計画、単純な基礎伏にできるため、コストアップ分を相殺できる。

積水ハウスの鉄骨2階建て戸建注文住宅のうち「イズシリーズ」は8割を超えているが、今後、新商品を武器に同シリーズの販売の拡大を狙う。販売目標はイズ・シリーズ全体で年間6000棟。