2018.9.25

リコー 住宅・不動産で360度カメラの提案強化

VR、ホームステージングで新サービス

リコーは住宅・不動産事業者に向け、360度カメラを活用したサービスの提案を強化する。360度カメラで撮影した画像とVRゴーグルや精緻なCGを組み合わせることで、住み替え後の部屋をイメージしやすくなるサービスを新開発。不動産仲介や既存住宅流通事業者などの営業ツールとして普及を目指す。

リコーは住宅・不動産事業者へ360度カメラ「THETA(シータ)」の提案を強化する。360度カメラとは、360度前後左右の全方向を一度に撮影できるカメラ。リコーは2013年から日本で一般消費者向けにTHETAの販売をスタートしたが、4年前から事業者向けのオプションサービス「THETA360.biz」を開始し、事業者による利用を拡げていこうとしている。

リコーがTHETA360.bizの提案対象として期待を寄せている分野のひとつが不動産仲介。不動産仲介では、消費者に室内のイメージをしてもらうために、物件紹介ウェブページに掲載した室内写真が重要な要素となる。

そこで、リコーではTHETA360.bizで、THETAで撮影した360度画像を物件紹介ウェブページに簡単に掲載できるサービスを提供。360度部屋の隅々まで見渡すことができるため、不動産仲介事業者は現地へ行かなくても消費者に部屋のイメージを掴んでもらいやすくなる。間取り図との連動やテキスト、ウェブリンク、動画の挿入なども可能。所定のフォーマットに基づいて簡単に編集できる。

事業者は約2万円からのTHETAの購入費用と、5000円からの月額費用でTHETA360.bizを利用できる。他にも類似サービスを提供している事業者はいるが、THETA360.bizでは費用を約10分の1に抑えている。

リコーの360度カメラ「THETA」。部屋の中央に置くだけで簡単に360度前後左右の全方向を一度に撮影できる
リコーの360度カメラ「THETA」。部屋の中央に置くだけで簡単に360度前後左右の全方向を一度に撮影できる
「RICOH360 – VR Presenter」では、VRゴーグルを使用することで、THETAで撮影した室内に実際にいるような「バーチャル内覧」ができる

VRで成約率1.5倍 HSのコスト5分の1

また、THETA360.bizの利用拡大に向け、オプションの新サービスも次々とリリースしている。今年6月には「RICOH360–VR Presenter」の提案を開始した。VRゴーグルを使用することで、THETAで撮影した室内に実際にいるような「バーチャル内覧」ができる。接客担当者はお客が内覧している画像をPCで確認できるため、的確なアドバイスが可能。先行して導入している企業では、成約件数が120%、成約率が150%アップし、接客時間を4分の1に削減しているところもある。利用料金はVRゴーグル1台あたり月額2万円。

また、今年7月には360度画像にCGでホームステージングを施す「RICOH360–VRステージング」の提案も開始した。不動産仲介や買取再販などでは、空き室に家具や設備、生活雑貨などを配置することで、居住後の暮らしをよりイメージしやすくする「ホームステージング(HS)」を行う事業者が増えている。

「リアリティがないと、物件の魅力を損ないかねない」(スマートビジョン事業本部・重山美詠氏)と、リコーではリアルさに強いこだわりを持ってRICOH360–VRステージングの開発を行った。テレビ画面への家具の映り込みや反射、家具の影、質感などもリアルに再現。他社でもCGによるホームステージングのサービスは出てきてはいるが、RICOH360–VRステージングのCGだとは感じさせないクオリティは一歩抜きん出ていると言っていいだろう。「カメラメーカーだからこそできる絵作りのノウハウを活かした」とスマートビジョン事業本部の稲葉章朗リーダーは自信をみせる。

RICOH360–VRステージングなら、1部屋あたり3万4800円と約5分の1のコストでホームステージングができる。また、ホームステージングについては、家具の運搬や搬入といった手間もある。対して、RICOH360–VRステージングなら、360度画像を用意するだけで手軽にホームステージングが可能であるというメリットもある。

今後、リコーはTHETA360.bizでの住宅・不動産事業者向けサービスをさらに拡充させていきたい考えだ。例えば、360度画像を活用したリフォーム・リノベーションのバーチャルイメージの提案を検討。既存の壁を取り払った間取りの変更も技術的には可能だという。

また、360度画像に写っている部屋の家具や設備、小物などを取り払って、空き室状態にすることも技術的には可能な状態にある。不動産仲介では空き室になることは決まっているが居住中であるため内覧できないケースもある。空き室状態を再現し、なおかつCGでホームステージングを施すことができれば、消費者は居住後をイメージしやすくなり住み替えが一層促進される可能性があるだろう。

[BEFORE] 360度画像にCGでホームステージングを施す「RICOH360 – VRステージング」では、手軽に価格を抑えてホームステージングが可能
[AFTER] 360度画像にCGでホームステージングを施す「RICOH360 – VRステージング」では、手軽に価格を抑えてホームステージングが可能