全国の工務店約50社による(一社)長寿命住宅普及協会(東京都台東区・会長:高砂建設 風間健社長)は、住宅の売却価格保証制度を開始した。高性能・高品質な既存住宅の価値がしっかりと評価され、流通し、住み継がれる市場の構築を目指す。これまでにない新たな仕組みとして注目を集めそうだ。

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全国の工務店約50社が集まり(一社)長寿命住宅普及協会を設立した。同協会では性能と品質の高い新築戸建住宅を認定し、将来にわたり売却価格を保証する制度「Best Value Home(ベストバリューホーム)」の運用を行っていく。

「ベストバリューホーム」は、協会が「Best Value Home住宅」として認定した住宅を対象とする。「Best Value Home住宅」は協会に加盟する工務店が新築戸建住宅を供給する際に、一定の基準を満たす優良な住宅。

長期優良住宅レベルを設定しており、第三者機関が住宅の基本性能を満たしていると認めることを求める。また、第三者機関が設計通りに施工したことを証明することも必要。具体的には、「建設住宅性能評価書」の交付を受ける必要がある。

さらに、長期のメンテナンスに関する取り組みも基準に設ける。定期点検および計画修繕の時期や内容、費用が明確に表示されている長期メンテナンス計画を立てることが必要。また、長期メンテナンスを実施するにあたり、準備、費用、人員の面での準備が確実になされていることも求める。このほか、住宅履歴情報の蓄積も基準に設定している。

「ベストバリューホーム」では、(一社)長寿命住宅普及協会が「Best Value Home住宅」の新築時に将来(5年後、10年後、15年後、20年後)の売却価格を査定する。将来の売却価格については、維持管理の実施状況を踏まえて5年ごとに更新する。そうすることで、消費者に住宅の維持管理の重要性を理解してもらいたいという考えだ。

そして、消費者が「Best Value Home住宅」を売却する際に、実際の売却時価格が同協会の査定価格を下回った場合には、その差額を消費者に保証する(土地価格は除く)。損保会社と連携することで、仮に差額が生じても協会が保証できる仕組みを作った。

保証額については、新築時に5000万円以下の戸建住宅なら、限度額を問わない。ただし、不動産仲介会社の査定額が(一社)長寿命住宅普及協会の査定額を下回る場合には、同協会が不動産仲介会社と協議して最終的な価格の下げ幅を調整するようにしたい考え。

「Best Value Home住宅」の価値をきちんと評価して販売できるように、将来的には宅建業の許可を持つ協会の会員内でネットワークを組み、「Best Value Home住宅」を流通させていく体制も構築していきたい考えだ。

売却査定価格の算出については、(公財)不動産流通推進センターの「価格査定マニュアル」を参考に(一社)長寿命住宅普及協会が独自に策定した「住宅価値算定プログラム」を利用する。部材の耐用年数だけでなく、リフォームやメンテナンスによる品質・性能の向上も査定価格に反映させる。そうすることで、従来は築20年程度で価値がゼロとされてきた木造戸建て住宅でも、適切に価値を評価する仕組みを構築する。このほか、査定価格の算出にあたり、ZEHや無垢材の使用、パッシブ工法を採用していることなどによる住み心地なども評価軸に入れる。

東京都中野区の中野サンプラザで、(一社)長寿命住宅普及協会の設立記念式典を開催。会長の高砂建設・風間健社長は「工務店の工務店による工務店のための協会にしていきたい」と挨拶

売却価格保証のイメージ

「ベストバリューホーム」のイメージ

高品質・高性能な新築と既存住宅流通促す

「ベストバリューホーム」の仕組みは、既存住宅の価値の決定権を住宅供給者側が持つことで、工務店の高品質・高性能な新築と既存住宅流通を促す仕組みだと言えそうだ。

従来では既存住宅の売却価格は仲介会社が査定し決めていた。だが、「ベストバリューホーム」では、中小工務店が集まった(一社)長寿命住宅普及協会が売却価格の査定と保証を実施。さらに、その価格には品質、性能などの価値を適切に反映させる。

これにより、高品質・高性能な新築戸建住宅を供給すれば、その価値が住宅売買時に適切に評価される。結果、消費者は既存住宅を適切な価格で売却できるため、戸建て住宅の新築時に、価格だけでなく品質や性能で選ぶ市場環境の構築につながる。

また、「ベストバリューホーム」では、損保会社と連携し、売却価格の保証を保険で担保する仕組みを採用している点がこれまでになくユニークだ。第三者機関による品質・性能の証明、長期メンテナンス計画を求めた「Best Value Home住宅」を保証対象とすることで、安定した売却価格を期待できるようにし、損保会社の理解を得たことがポイントだと言える。こうした仕組みは中小工務店単独では構築するのが難しい。それだけに、中小工務店が集まることで実現できたことであるだろう。

また、一社単独ではなく中小工務店が集まって既存住宅価格の保証を行うことで、市場への広がりも出てくる。今後、(一社)長寿命住宅普及協会認定では、加盟工務店を増やしていきた考えで、100社から150社くらいの加盟を想定している。

大手ハウスメーカーでは既にスムストックにより、既存住宅を独自の仕組みで適正に評価し流通させる仕組みがあるが、中小工務店ではこうした取り組みが遅れていた。だが、「ベストバリューホーム」の提供が開始されたことで、中小工務店レベルでも既存住宅流通への取り組みが本格的に動いていくきっかけになるかもしれない。また、「ベストバリューホーム」の仕組みは、高品質・高性能な戸建住宅の供給を促すことも期待できるだけに、中小工務店の新築の品質・性能のボトムアップになる可能性もありそうだ。

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