2018.7.24

ウイング 2×4建築高層化をサポートするプロジェクトチームを始動

2×4建築高層化をサポートすることで新市場開拓を狙う

2×4建築部材を製造・販売するウイングが中心となり、建材メーカー、金物メーカー、建築事務所などが集まり、4階建ての2×4建築づくりをサポートするプロジェクトチームを発足した。チームの各メンバーが持つノウハウを集結し、住宅事業者などが推進する2×4建築高層化をサポートすることで新市場開拓を狙う。

2×4建築のコンポーネント事業を展開するウイングが中心となり、吉野石膏、金物メーカーのカナイ、高強度鋼材製品などを扱う高周波熱練(ネツレン)、構造設計事務所の諸冨設計、Office GABLEなどが集まり、ハウスメーカーや工務店などが取り組む、4階建ての2×4建築づくりをサポートするプロジェクトチームを発足した。ウイングの執行役員の橋本宰氏は、「プロジェクトチームを発足して事業化を狙うのは、100坪~1000坪、坪単価100万~150万円のゾーン。このゾーンに対しては、ゼネコンをはじめ、ハウスメーカー、工務店などもほとんど手をつけておらず、プレーヤーが不在になっている。このゾーンを狙い4階建ての2×4建築を推進することで、都市部などに眠る潜在的なニーズを掘り起こし、新マーケットを開拓できる」と話す。

同社によると、木造4階建てを実現することで、躯体の軽量化効果により基礎の配筋費用がRC造と比べて約5割、鉄骨造と比べて約3割削減できるという。

また、土地の有効活用・狭小地の価値向上にも寄与する。4階建てとすることで土地の活用率は、3階建てに比べて1.3倍向上。居住空間を増やせるため、3世帯、4世帯住宅に対応しやすくなる。その他、店舗併用住宅として活用することや、空いた部屋を賃貸として利用することも可能で、提案のバリエーションの幅が広がる。

4階建て木造化へ立ちはだかる大きなハードル

ただ、木造の3階建てと4階建ての間には、大きなハードルが立ちはだかる。今回のプロジェクトチームに参加する諸冨設計の諸冨稔代表は「木造建築の4階建ては3階建ての延長ではない。3階建てまでは、建築基準法で定められたルート1の比較的容易な許容応力度計算で対応できるが、2×4工法4階建ては、設計の自由度が高まる一方で、より複雑な計算が必要なルート3の保有水平体力計算で対応することが求められる。しかし木造の分野ではルート3の構造計算に対応できる経験者が圧倒的に不足している」と指摘する。こうした理由から、3階建ての木造を手がける事業者は増えているが、4階建ての木造化を推進する事業者は、ひと握りに限られているのが実情だ。ルート3の構造計算に対応できる希少な設計者を確保すること自体にコストがかかり、さらに、ルート3の構造計算では、建物全体のバランスを考慮せずにデザインを優先するほど、飛躍的に建設コストがかさむ傾向があるのだ。

こうした2×4建築の高層化のハードルを克服するために、今回発足したプロジェクトチームでは、すでに4階建ての2×4建築づくりで豊富な実績を持つ、諸冨設計、Office GABLEが、設計の初期段階からアドバイスを行う体制を整備した。クライアントである住宅事業者と打ち合わせを重ねながら、建物全体のバランスを考慮した設計プランをつくり上げる。結果として、コスト抑制効果が期待できる。さらに、今後、こうした知見を集めた4階建て2×4建築の設計プラン集も用意し、提案ツールとして活用していく。

神奈川県川崎市で、プロジェクトチームが新昭和ウィザース神奈川と共同で、2×4工法で建設した4階建て住宅展示場の施工風景
完成した4階建ての住宅展示場。こうした2×4建築を推進することで、都市部などに眠る潜在的なニーズを掘り起こし、新マーケット開拓を狙う

2×4工法高層化を実現するタイダウン方式金物も独自開発

4階建て2×4建築を実現するためには、高耐力壁に対応した金物も用意する必要がある。現状では、4階建て2×4建築では、主にタイダウン方式の金物が使用されている。北米の木造高層建築などで普及しているもので、建物の下部(基礎アンカーボルト)から、各階の耐力壁を鋼材系のロッドで緊結し、座金プレートで耐力壁の上部を押さえつけることで、地震や強風時に生じる引き抜き力に抵抗し、耐力壁の転倒を防止する。ただ、現在日本で使用されているものは、全て特注対応品となり、コストアップ、納期の長期化といった課題があった。

そこでプロジェクトチームでは、国内に一般流通する製品を組み合わせることで、従来のタイダウン方式の金物と同じ役割を果たす、汎用性の高いタイダウン方式金物を独自に開発することにも成功。これにより、2×4建築の高層化に伴うコストアップ、納期の長期化といった課題も克服した。

新昭和ウィザース神奈川とコラボし川崎に住宅展示場

プロジェクトチームでは、住宅事業者などとパートナー関係を構築し、2×4建築の高層化に向けトライアルを積み重ねている。すでに、新昭和ウィザース神奈川の川崎平間住宅展示場での2×4工法4階建て建設に全面協力している。ウイングの橋本氏は「新昭和ウィザース神奈川の神崎社長の先導のもと、同社の設計、工事部門と試行錯誤を共にしていけただけたことが結果として設計・スキームの更なる改善、進化につながった。こうした製販会社の垣根を越えたパートナー関係の構築は、これからの様々なトライアルにも必要不可欠になる」と話す。

現在、狭小地の共同住宅・3世帯住宅、宿泊施設、事務所と多様な建築物の計画の相談を受けている。新市場開拓に向け更なるプロジェクトの強化を図る考えだ。