ポラスグループの中央グリーン開発が、これからの分譲地開発に一石を投じるようなプロジェクトを進めている。開発と共に整備をする新たな集会所を中心として、地域にも喜ばれる街づくりを形にしようとしている。

埼玉県越谷市南荻島。元荒川に寄り添うように住宅が建ち並び、対岸には宮内庁埼玉鴨場や越谷梅林公園の緑が溢れる。春には元荒川沿いを満開の桜が彩り、埼玉県内でも有数のお花見スポットとして賑わいを見せる。

水辺と緑に彩られたこの地において、中央グリーン開発は全64邸からなる戸建分譲住宅「パレットコート北越谷 フロードヴィレッジ」の販売を開始した。

地域住民も巻き込み“使える”集会所を検討

この分譲地では、地域住民も巻き込みながら、コミュニティ形成に向けた仕掛けを盛り込んでいこうとしている。その仕掛けづくりで重要な役割を担うのが街区内に新たに整備する集会所。

越谷市では、50戸以上の分譲地を開発する際の要件として集会所を整備することを求めている。今回のプロジェクトでも集会所を街区内に整備することになったが、歩いて5分程度の場所に、この地域の出津自治会が既に利用している集会所がある。

単に開発要件を満たすためであれば、整備後の活用方法などを考えることなく建物を建築してしまえば良い。しかし、中央グリーン開発では、ひとつの取り組みを行うことを決定した。

自治会や越谷市なども巻き込みながら、集会所の利用方法を検討し、その利用方法にあった集会所を整備するために「南荻島未来会議」を開催することにしたのだ。

以前にも同じような取り組みに挑戦したことがあった。1035戸からなる「パレットコート七光台」の分譲完了後、旧千葉支店を取り壊して、5区画の分譲地を販売する予定であったが、地域住民のために活用することを決定。活用方法を住民自ら決めてもらうために、「光葉町ミライ会議」を開催。住民の意見を反映し、カフェとして活用することになった。

「光葉町ミライ会議」での経験も活かしながら、「南萩島未来会議」を行うことになった。その結果、計4回の会議に、延べ150名もの人が参加し、集会所、さらには元荒川の河川敷を活用した「暮らし像」が形づくられていった。参加者の中には、大人だけでなく、中学生の姿もあった。

会議の運営を担った同社CSV推進室コミュニティ企画係の横谷薫係長は、「自治会の方々の参加意識が非常に高く、そのおかげで色々な意見をいただくことができた」と語る。

「南荻島未来会議」での議論をもとに、集会所だけでなく、元荒川の河川敷も活用した暮らし像を具現化していく

元荒川沿いの自然豊かな場所で開発が進む「パレットコート北越谷 フロードヴィレッジ」

地域の自治会や越谷市などと一緒に「南荻島未来会議」を開催し、集会所の活用方法を検討

いつでも、誰でも、気軽に立ち寄れる楽しい場所

未来会議での意見を反映する形で、新しい集会所をみんなで楽しむ「まちのリビング」のような場所にすることに決定した。

「シェア工房」、「地域で子供を育てる」、「ふらっと立ち寄れる縁側」という3つのコンセプトも決めた。「シェア工房」については、手仕事や趣味を持つ人が多いことが分かったので、教室やギャラリー、マルシェなど「ものづくり」を通したつながりができるような集会所を目指す。

「地域で子供を育てる」という点では、集会所に隣接して整備する公園、さらには元荒川の河川敷を活かして、地域の人々が「市民先生」となって、子供の遊び場や子供食堂などを開いていき、地域全体で子供を育てていくような環境を作りだしていく。「ふらっと立ち寄れる縁側」というコンセプトについては、高齢者などが散歩中にふらっと立ち寄れ、話ができるようにしていきたい考えだ。

思い出を消化する時間をつくる「棟下式」が未来会議の下地に

今回の分譲地は、もともと企業の研修所だった。グラウンドもあり、かつては地域住民による運動会が行われていた時期もあったそうだ。

中央グリーン開発では、研修所を取り壊す際に「棟下式」を実施した。「棟下式」とは、建物を取り壊す際に行う祈願祭。

研修所を解体する前に行われた「棟下式」では、清祓式や餅撒きのほか、お宝発見ツアーと称し、解体予定の研修所の備品を持ち帰るイベントなども開催した。

予想を上回る700名以上が参加し、「棟下式」は盛況のうちに幕を下ろした。

「企業が一方的に周辺住民に告知して建物を解体するのではなく、地域の方々が思い出を消化する時間があっても良いのでないか」とは横谷係長の言葉。

また、同社ブランディング課プロモーションチームの茂田隆俊主任は「建物の解体工事中のクレームも少なく、企業からの一方通行のコミュニケーションでは得られない効果があったのではないか」と語る。

この棟下式によって周辺住民との交流が図れたことで、その後の未来会議開催に向けた下地にもなったという。

新しい街で新しい暮らしを始める人々だけでなく、周辺住民も喜ぶ分譲地開発とはどうあるべきなのか―。中央グリーン開発の取り組みは、地域の価値を高める開発のあり方を考えるうえでも、今後の羅針盤になるかもしれない。