産総研、光透過性、耐湿性を備えた断熱材を開発
窓に貼ることで簡単に断熱性能が向上 省エネ改修の用途にも期待
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、世界初となる光透過性、耐湿性などを兼ね備えた 断熱材 を開発した。主な用途として想定しているのは窓用の 断熱材 。窓やガラス戸などの採光部などに室内側から施工することで、採光を確保しながら断熱性能の向上を図れるという。建築物の省エネ化を加速させる新建材として期待が高まる。
産総研は、エビやカニの甲殻から得られる天然高分子のキトサンと呼ばれる素材を活用し、世界初となる光透過性、耐湿性、柔軟性を兼ね備えた断熱材を開発した。産総研では、高断熱性、光透過性などを兼ね備えた新規素材としてキトサンに着目し、キトサンを骨格とした超低密度の多孔体(キトサンエアロゲル)の開発に2015年から取り組んできた。この多孔体は、直径5~10ナノメートルの微細なキトサン繊維が絡み合った三次元網目構造を持ち、体積の約97%が空隙となっているため、優れた光透過性、断熱性能を発揮する。同じくバイオマス由来のセルロースを微細繊維に解きほぐした材料と比較して、よりシンプルなプロセスで製造できるという特性も備えている。
一方で、キトサンエアロゲルは、空気中の湿気で変質するため、実用化に向けた課題となっていた。今回、キトサンエアロゲルに独自の工程を加えることで、三次元網構造を維持したまま、撥水性を付与する技術を確立。耐湿性を大幅に改善することに成功した。また、高断熱性、光透過性といった性能も維持していることが確認できた。さらに、撥水性キトサンエアロゲルを90%以上圧縮したところ、割れずに均一に圧縮されることも確認。強靭な柔軟性も備えていることが分かった。
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