2024.10.11

EXPO-PHR 運営事務局、大阪・関西万博に出展予定のPHRユースケース10件の概要を発表

大阪・関西万博に出展予定のPHRユースケース10件の概要を発表した。食事、運動、睡眠、ライフスタイルといったカテゴリーで様々なユーザー体験の提供を予定しており、万博での成果展示を通して、国民のデータ連携意識を変えていきたい考えだ。

EXPO-PHR 運営事務局は、大阪・関西万博での出展に向けて、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)サービス利用者の拡大とユースケースの創出を目指した経済産業省の実証事業「令和5年度補正PHR社会実装加速化事業」に参画する事業者によるユースケース10件の概要を発表した。

PHRとは、個人の健康や身体の情報を記録した医療データのこと。経済産業省は、日本人全体の健康寿命を延ばすために、医療が必要になる前の予防健康づくりに力を入れて、ヘルスケア政策を進めているが、そのひとつとして26年度以降のPHR社会実装を目指している。

今回の実証事業ではデータを提供する「PHR事業者」と、データを活用してユーザーにパーソナライズされた体験を提供するユースケースを創出する「サービス事業者」を情報連携基盤で仲介する。参画事業者はPHR事業者10社、サービス事業者10社の合計20社。仲介に使用する情報連携基盤「PHR CYCLE」は、25年4月にローンチを予定している。経産省ヘルスケア産業課の橋本泰輔 課長は万博で事業成果を発表する意義について「万博を通じて、来場者にPHRが共通プラットフォーム化した世界を体験してもらうことで、国民のデータ連携意識を変えていきたい」と語った。

10件のユースケースは、食事のカテゴリーが2件、運動のカテゴリーが2件、睡眠のカテゴリーが3件、ライフスタイルのカテゴリーが3件となっている。例えば、運動のカテゴリーで発表された「過剰なカロリーぶった斬れ!VRチャンバラエクササイズ」(サービス事業者:ジーン(大阪府大阪市、里見陽祐代表取締役社長)、PHR事業者:Wellmira(東京都千代田区、渡辺敏成 代表取締役社長兼CEO)、NTTドコモ)では、VRゲームにPHRを取り込むことで、生活態度によって出現アイテムなどが変化し、健康的な生活を送っている人ほどゲームを有利に進めることができる。

住宅に関係するものでは、LIXILがサービス事業者として、PHR事業者のFiNC Technologies(東京都千代田区、小泉泰郎代表取締役CEO兼CFO)、沢井製薬のデータを活用した「もっとグッスリ(More IoT for sleep)」がある。LIXIL Housing Techonologyデバイス事業部 IoT推進事業部の倉林慶太部長は「住宅内のセンシングは得意であったが、家の外の情報と連携することで1日を通しての体調は空くとそれに合わせた行動レコメンドができるようになる」と期待を込めた。

PHRの活用が一般化すれば、生活の様々な場面で、体力や持病、その日の体調などに合わせてパーソナライ化されたサービスが受けられるようになる。もちろん住宅も例外ではない。近年、住まいと健康の関係性への注目度が高まっているが、一人ひとりに最適化された暮らしが提供がされる未来がすぐそこに迫っている。

大阪・関西万博へのユースケース展示でユーザーのデータ連携意識を変えていく
ゲームにPHRを取り込むユースケースも(写真はジーンのAPP開発部曽根俊則部長)

サービス事業者:LIXIL/PHR事業者:FiNC Technologies、沢井製薬
「もっとグッスリ(More IoT for sleep)」

LIXILは、以前より同社のスマートホームシステム「Life Assist2(ライフアシスト2)」を利用した最先端スマートハウスへの実証を行っている。

今回のユースケースでは、FiNC Technologiesの「FiNC」と沢井製薬の「SaluDi」、2つの健康管理アプリのデータを活用し、入浴~入眠~睡眠中~起床時の流れの中で、適切なタイミングでの住宅機器のコントロールや行動リコメンドを実施、睡眠環境の最適化へつなげる。「FiNC」からは、歩数情報や運動情報、睡眠情報などを取得し、「SaluDi」からは服薬情報などを取得する。これを基に、例えば、血圧の高い人に対しては、浴槽の温度をぬるめに設定する、健康で歩数の多い人には熱めに設定して、早めの就寝を促して疲労回復を目指すなどを行う。服薬情報との連携は、まず高血圧と睡眠障害に絞って実証を進める。

同社は、22年10月に、他企業とのオープンイノベーションの拠点としてIoT実験住宅「みらいえらぼ」(埼玉県越谷市)を開設しているが、今回の実証はこの「みらいえらぼ」で今年2月頃から行っているという。

大阪・関西万博では、「午睡できる環境を用意して、その中で睡眠環境の最適化を体験してもらう予定」(倉林部長)だとする。将来的には睡眠後の覚醒度をユーザー本人に見えるようにしたいとした。

LIXILはライフアシスト2による住宅機器コントロールに健康管理アプリの情報を紐づけ睡眠環境の最適化を目指す