MAAHA CHOCOLATE 田口愛さん 笑顔の連鎖を生み出すカカオ革命

Mpraeso 合同会社CEO 田口 愛さん

19歳の決心
自分が好きな道を行く

チョコレートへの想いを抱えたまま19歳になった田口さん。長年の想いを行動へと移す。夏休みを利用し、2カ月にわたりガーナに行く決心をする。

「二度受験に失敗し、結局は第二志望の大学に行くことになりました。周りの同級生は期待に胸を膨らませて輝いていました。私は『数学で点数を稼がなきゃ』といったことばかり考えていました」。

子供の頃の田口さんは、どちらかと言うと隅っこで本を読むのが好きだったという。中学、高校と勉強に励み、「資格をとってどこでも一人で生きていけるようになりなさい」というお母さんの言葉を実践しようとがんばっていたそうだ。しかし、大学に入り、周りの同級生を見る中で、「社会的に正しい道ではなく、自分が好きな道を行きたい」と強く思うようになる。

自分が好きなものは…。それは食べること。美味しいものを食べて、誰もが笑顔になる瞬間。そして、その料理を作ってくれた人、さらには野菜などの材料を育てた人にまで想いを膨らませていく時―。

それこそが田口さんの好きなものだった。そして、食べ物のなかでも、田口さんが一番幸せになるもの。それがチョコレート。

決心してからの田口さんの行動は素早い。隅っこで本を読んでいることが好きだったとは信じられないほど。ガーナのことを調べ、アフリカ関連のイベントなどにも積極的に参加した。
膨らむモヤモヤを行動に変えていく

ガーナのことについて深く知るなかで、モヤモヤした感じもあったそうだ。ガーナのカカオ農園では、児童労働が行われており、貧困問題も深刻化している。「もうチョコレートを食べるべきではないのかな」。そう思うこともあった。しかし、「私一人がやめたところで世界は変わらない。ガーナの人たちを笑顔にするためにやれることがあるのではないか」と田口さんは思いなおす。

そうした想いを抱えながらスタートした19歳の大冒険。タイからエチオピアを経由し、ガーナへ。日本を出発してから2日間を要した。

ガーナに到着して驚かされたのは街の活気。路上で陽気に歌う若者には、貧困問題で悩む悲壮感はまったくない。やはり自分の目で見ないと分からないことがある。

実は田口さん、ガーナに向かう前に現地のNGOに連絡し、カカオ農園を紹介してもらうことになっていたそうだ。ところが、突然、そのNGOとの連絡が途絶える。NGOから宿泊場所も提供してもらうことになっていた。日本へ帰るためのエアチケットは2カ月後しか使えない。

初めてのガーナ。しかも一人旅。普通ならここでへこたれそうだが、田口さんのチョコレート愛は、そのくらいでは萎まない。現地の日本人などを頼りにしながら、なんとか宿泊場所を確保し、カカオ農園にも行けることに。

農園を訪れた田口さんを見る人達の目は、宇宙人を見るようだったという。なぜ、ここに日本人が‥。

田口さんは「チョコレートが好きだから来ました」と真正面から伝えた。ところが反応は鈍い。よくよく話を聞くと、チョコレートは知っているが、食べたことはないという。高価すぎて農園で働く人たちとっては身近な食べ物ではないのだ。

そこで田口さんは、YouTubeで「カカオ チョコ 作り方」と検索。手作りのチョコレートづくりに挑む。もちろん日本でも作ったことはない。初めてのチャレンジ。しかもオーブンはなく、炭火での調理。

完成したチョコレートは、決して“上出来”と言えるものではなかった。甘さも足りない。しかし、農園の方々は喜んだ。「今まで食べたもののなかで一番美味しい」という声も挙がった。そして、誰もが笑顔になっていた。田口さんが一番大好きな瞬間である。
笑顔を目にした田口さんのモヤモヤは行動へ変わる。何もない私でも誰かを笑顔にできる―。

日本に帰国する時、「アイがいないと、もうチョコレートが食べられない」と寂しがる人々に田口さんは約束する。「私がいなくてもチョコレートを食べられるようにする」と。具体的な計画も、確固たる根拠も、お金もない。しかし冒険はまだまだ終わらない。

チョコレートを食べる人だけでなく、その原料となるカカオを生産する人々も笑顔にする。それが田口さんが掲げたミッション

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