木造住宅の耐震シミュレーションソフト「wallstat」機能強化版を公開
計算時間が10分の1に短縮
京都大学生存圏研究所 中川貴文准教授は2022年1月17日、木造住宅の地震時の損傷状況や倒壊過程をシミュレートするプログラム「wallstat(ウォールスタット)」の機能強化版をフリーソフトとしてホームページで公開した。
ウォールスタットは、パソコン上で建物を3次元的にモデル化し、過去に起きた地震や想定される極大地震など様々な地震動を与え、木造住宅の耐震性能を動画で確認(見える化)することができる。住宅設計者などに累計5万回以上ダウンロードされており、建物が倒壊するまでの計算をできるのがこのソフトの特徴だ。
今回の機能強化版である「ウォールスタット バージョン5」では、これまで1回のシミュレーションに標準的なパソコンで20~30分程度かかっていた計算待ち時間を10分の1に短縮(2分程度)することに成功した。設計時に間取りを変えて繰り返しシミュレーションする際に、計算待ち時間がユーザーの障害となっていたが、今回の機能強化により、実務における導入がより簡単になった。研究者や構造設計者だけでなく、工務店・ハウスメーカーの設計者等にも幅広く普及し、耐震性能の検証、顧客へのプレゼン、防災意識の啓発などに活用されることが期待される。
また、今回の「ウォールスタット バージョン5」では、建材データベースの機能強化も図った。ウォールスタットでは、個々の建材の変形や強度を詳細にモデル化するため、通常は世に出ることのない建材の破壊実験データが必要となる。従来は、ユーザーが建材メーカーに問い合わせて、実験データを個々に入手する必要があり、手間となっていた。ウォールスタットの適切な普及、木造住宅の地震被害軽減を目的として設立された耐震性能見える化協会は、この手間を解消するため、建材メーカーと協力して2年前からウォールスタット用の建材データベースの整備を進めている。「ウォールスタット バージョン5」では、20社100製品以上の耐震部材の情報をWEBからダウンロードしてウォールスタットに組み込むことができ、実際の商品の実験データベースを使うことにより、より精度の高いシミュレーションが可能になる。
さらに、解析モデルを作成するためのGUI(入出力インターフェース)の機能も強化した。市販のCADソフトと連携し、シミュレーション結果の分析や動画の作成をより簡単にできるようにした。地震により住宅が揺れている様子をタブレットやYouTubeなどで簡単に表示することが可能で、設計者のプラン検討、営業担当者の施主へのプレゼンを強力に支援する。
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