2024.12.5

住宅メーカー、復職制度改革で人材難を克服

対象拡充などで障壁解消

 

近年、あらゆる業界で人手不足が騒がれており、各企業で人材確保競争が激化している。パーソル総合研究所と中央大学の調査では、労働人口は2035年に384万人も不足すると予測されている。住宅業界も例外ではなく、人材確保が経営課題の優先事項になっている。

こうしたなか、住宅業界で広がりを見せているのが復職制度だ。復職制度とは、転職や出産・介護などを理由に退職した従業員を再雇用する社内制度のこと。この制度を使って再入社する人は、社風や業務プロセスに精通しているため、企業にとっては即戦力となる優秀な人材の確保に直結するというメリットがある。

Win-Winの関係構築で即戦力人材の確保が加速

積水ハウスは、退職者の新たな活躍機会を創出するため、24年12月1日から「Welcome Home制度」をスタートした。同制度は、全従業員参加の社内コンペ「SHIP」から生まれたアイデアを基に、これまであった「退職者復職登録制度」を改定して制度化したもの。

従来の退職者復職登録制度では、年齢や勤続年数などによって登録対象者が限られているなどの課題があった。今回改定を図ったWelcome Home制度では、こうした制限を撤廃し、転職も含めた自己都合退職者が登録可能となるなど、登録条件を大幅に拡大した。

加えて、「アルムナイ(退職者)ネットワーク」専用サイトを開設。登録者には会社情報や求人情報、復職者のインタビュー記事などを発信するほか、限定イベントなど交流の場を提供し、退職者と継続的なつながりの創出を目指す。

積水ハウスの「Welcome Home制度」のイメージ図

退職事由を問わない再雇用を活性化する「ウェルカムバック採用」を進めているのが、パナソニック ホームズだ。23年6月からスタートし、採用ホームページも開設している。

同社もこの制度の導入以前から復職制度を実施してきたが、その対象者を退職事由が結婚、育児、介護である人に限定していた。「ウェルカムバック採用」では、この要件を撤廃することで意欲ある退職従業員を再雇用する機会を創出し、人材採用の間口拡大に加え、即戦力となる人材確保の強化や人材の多様化を図っている。

パナソニック ホームズは2023年6月から「ウェルカムバック採用」を開始した

ヒノキヤグループは、同グループに以前勤務していた人を対象に再入社を促す「カムバック採用」を積極的に進め、即戦力人材の確保に動いている。

再雇用者の多くは、離職中や他社での勤務の中で新たな経験や知識を得て戻ってくるため、同グループはその斬新な視点やアイデアが既存の組織にイノベーションをもたらすことに期待しているという。

給与水準は、以前の職場と同水準以上を確約。一度は離れた職場であっても、過去の経験を生かしてポジティブな姿勢で再入社後のキャリア形成ができる環境づくりを徹底している。

採用フローも一般的な採用ルートより簡略化しており、カジュアル面接で対象者の意思を確認したのち、履歴書提出、面接(1回)を経て内定となる。

ヒノキヤグループが進める「カムバック採用」では、採用フローを簡略化している(同社ホームページから抜粋)

カムバック採用をさらに強化するために、採用ホームページ内にカムバック入社した従業員のエピソードを掲載するという取り組みもスタートさせている。併せて、カムバック採用の関連情報を発信する「アルムナイサイト」を新設し、対象者の登録受け付けも2024年12月4日から開始した。

労働人口の減少により、人材確保競争はこの先もますます激化していくことが予想される。復職制度は、求人者と求職者の双方でWin-Winの関係を構築しやすいことから、人材確保難に一石を投じる切り札のひとつになるかもしれない。