2024.10.29

塩ビ工業・環境協会、小冊子「カーボンニュートラル建築実現のために」を発刊

カーボンニュートラル住宅に適した窓製品の例などを掲載

 

塩ビ工業・環境協会が設置している「建築物の運用時におけるカーボンニュートラル検討委員会」が、これまでの研究成果をまとめた小冊子を発刊した。省エネ住宅の周知や樹脂窓などの販売促進を目指す。

塩ビ工業・環境協会(VEC)は、21年に「建築物の運用時におけるカーボンニュートラル検討委員会」を設置、芝浦工業大学建築学部の秋元孝之学部長を委員長に置き、樹脂窓などの断熱性能に優れた建材・設備の利用などによる住宅の省エネルギー化と、快適性・健康維持のための室内環境の検討を行ってきた。今回、その成果として、小冊子「カーボンニュートラル建築実現のために」~開口部建材によるカーボンニュートラル住宅の提案~を発刊した。

小冊子には、カーボンニュートラル住宅の提案として、4つのポイント①「へらす」ための工夫、②「つくる」ための工夫、③「つかう」ための工夫、④「ためる・くばる」ための工夫が掲載されている。また、建築物省エネ法での想定住宅でも使用されている一般住宅のモデル(4LDK、延床面積120㎡)を用いて、カーボンニュートラル住宅の東京におけるエネルギー消費量とその手法(使用建材など)も掲載。これによると、「樹脂サッシ・三層複層ガラス・シャッターの使用と、外壁・屋根の断熱強化(断熱厚100㎜)、高効率エアコンの使用、全熱交換器・高効率ファンによる換気、LED照明による照明制御、高効率給湯機・節湯水栓の使用、太陽光発電(7kW)での創エネ」の組み合わせでカーボンニュートラル住宅を達成するという。なお、この試算にはZEH住宅の達成条件には含まれていない家電による電力消費を考慮しているため、太陽光発電設備の掲載量が多く設定してある。そのほか、別添え資料として、カーボンニュートラル住宅に適用可能な窓製品および日射遮蔽建材製品の例も提示。窓製品についてはそれぞれの熱貫流率や、サッシ・ガラスの種類についても掲載されており、カーボンニュートラル住宅を目指す上での参考となる。

塩ビ工業・環境協会の藤井一彦会長は、小冊子の活用について「省エネに関する各種イベントで配布したり、会員のサッシメーカーの販売促進に使っていただければ」と話す。

集合住宅の樹脂窓採用へ期待高まる

サッシ向けの硬質塩ビは昨年に比べ、出荷が伸び悩んでいる。この状況について、藤井会長は「7月、8月はお盆などを挟んだこともあり、対前年で8割を切るなど動きが鈍ったが、9月以降は対前年9割まで戻ってきている。また、大手住宅事業者などを中心に集合住宅への樹脂サッシの採用も増えてきていると感じており、こうした部分でプラスに持って行ければ」と前向きな姿勢を見せた。また、検討委員会の今後については「確実ではないが、ホールライフカーボンの把握と評価に向けて、運用時以外の研究をしていきたい」(秋元委員長)とした。

戸建・集合住宅問わず、カーボンニュートラル住宅へ向けた動きが加速しているようだ。

小冊子について説明する秋元委員長
カーボンニュートラル住宅のエネルギー消費量の計算結果