インタビュー |  2020.6.22

株式会社アンドパッド 稲田武夫 代表取締役社長インタビュー

幸せを築く人を、幸せにするために ゆとりを創造するためにITで人手をカバー

生産性が低い業界だからこそ、効率化の余地は大きい

株式会社アンドパッド 稲田武夫 代表取締役社長
株式会社アンドパッド 稲田武夫 代表取締役社長

―現在の住宅建築をめぐる状況をどのように捉えていますか。

人手不足が住宅業界にもたらす影響は大きいのではないでしょうか。人手が不足してくると、単純に着工棟数 が低下するだけでなく、人材を募集し教育していくコストも膨らんでいきます。その一方で物流コストが上昇する傾向にあるだけでなく、新築市場が縮小するなかで競争が激しくなり、集客コストも今後上昇することが見込まれます。 こうした現状を考慮すると、住宅会社は、労働生産性を上げていくということが今まで以上に重要な経営課題になっていきます。

建築業界は大きな市場であるにも関わらず、他の産業と比べると労働生産性が低いと言われています。ただ、他の産業とは単純に比較できない事情もあります。注文住宅の場合、自動車などと異なり完全オーダーメイドです。また、施工現場の状況によっても工事の手法などが変わるので、なかなか標準化ができない。

しかし、その一方で人の手に頼っている仕事をIT化などによって効率化する余地は非常に大きい。そこの部分を改善していくだけでも、労働生産性は飛躍的に向上していくと考えています。

―ANDPAD開発の目的をお聞かせください。

2014年に創業した当初、リフォーム事業者の方々を紹介するポータルサイトを立ち上げました。その後、リフォーム業者の方々の仕事内容を知るなかで、とくに現場監督者の業務が非常に煩雑であり、負荷も大きいことを知ったのです。

現場監督の方々の業務負荷を減らすことはできないのか―。そういう発想からANDPADの開発に着手したのです。

ANDPADが世に出ていく前にも、現場管理を効率化するためのツールはありましたが、元請である工務店さんの社内だけで情報を共有するものが多かった。ANDPADの発想は、元請けの方々だけでなく、現場で工事を行うパートナーの方々まで含めて、情報を共有しながら、コミュニケーションをより円滑にすることを目指しました。

それによって、現場監督が現場に行かなくても、適切なマネジメントができるようにしたかったのです。

ANDPADは、1年ほどの開発期間を経て2016年3月にサービスを開始しました。

当時は、スマートフォンがようやく普及しはじめた頃でしたので、タイミングもよかったですね。順調に利用者が増え、現在では契約社数2000社、利用社数5万社、14万人の職人の方々に利用していただいています。

まずは使われるツールに
コンストラクションマネジメントのきっかけに

―どのような点が利用者から評価されているとお考えですか。

ITツールは、どんなに高度で優秀なものであっても、使わなければ意味がありません。ANDPADの開発時にも、「まずは使われるツールにしょう」という目標を掲げてきました。その結果、非常に使いやすいツールになったと自負しています。

また、我々は導入してくれている元請けの企業だけでなく、実際に利用している施工業者の方々が使いやすいものにすることを意識しています。こういうIT系のツールについては、元請けの会社が導入に踏み切りたいが、パートナー企業が活用してくれないといった声を聞きます。しかし、我々が現場の声を聞いている限り、施工業者の方々も利用に前向きです。「使えるツール」になっていれば、施工業者の方々も積極的に利用してくれるのです。

導入した企業の方々からは、労働生産性が向上したという高い評価をいただいていますが、業務改善などにも役立ったという声も多くいただいています。例えば、ANDPADを上手に使っている現場監督と未使用の監督を比較すると、施工業者の方々とのコミュニケーションの取り方やその他の業務の進め方に明確な違いがあります。ANDPADでは、関係書類だけでなく、コミュニケーションの記録も確認できるので、どの点を改善すれば良いのかということを“見える化”できるのです。

さらに言うと、とくに新築住宅の場合、ANDPADの価値を最大限に活かすためには、着工までに準備や手配などを適切に進め、明確な計画を立てておく必要があります。つまり、コンストラクションマネジメントが大切になるのです。ANDPADの導入をきっかけに、全社で統一的なコンストラクションマネジメントの手法を確立する企業も多いですね。

―業務の統一的なフォーマットが確立されていくというわけですね。

その通りです。業務の統一的なフォーマットがないから作業が煩雑になる。また、明確な施工計画などがパートナー企業と共有されていないと、施工業者の方々の動き方にも無駄が発生していまいます。そのことが結局は現場監督へと返ってきて、さらに業務が煩雑になってしまう。こうした問題を解消するためにも、まずは全社で共有できる業務のフォーマットやルールを構築し、そのうえでANDPADを使い情報を共有し、コミュニケーションを円滑にしていくことが求められるのです。

対して、リフォームの場合は少し状況が異なるかもしれません。リフォーム工事では、突発的に対処すべき事項が発生しやすい。例えば、現地調査の情報以上に老朽化が進んでいて当初想定にはなかった追加工事が必要になるといったこともあります。こうした突発的な事象に早急に対応していくために、ANDPADのコミュニケーション機能が重宝されています。わざわざ現場監督が現場に行くことなく、現場の写真などを共有しながらコミュニケーションをとることで、問題が解決することがありますから。

―住宅建築をどのように変えていきたいとお考えですか。

ANDPADだけで住宅建築を変えていくというのはおこがましいですが、我々は「幸せを築く人を、幸せに。」という理念を掲げています。

どれだけにテクノロジーが進歩したとしても、住宅建築が人の手によって生み出される仕事であることは変わらないでしょう。

ただし、先ほども言いましたが、ITなどを活用することで、人の手がかかる部分を効率化していくことは可能です。そのためのツールがANDPADです。

そして、人の手がかかる部分を効率化することで、住宅を通じて幸せを築く人たちにゆとりをもたらしたいというのが当社の想いです。ゆとりができることで、自らが建築するものの質をさらに追及したり、技術を磨いたり、知識を蓄えたり、家族や仲間との絆を深めたり、さらにはお互いの仕事をたたえ合い、誇れる仕事を増やしていくことができるはずです。

そして、そのゆとりはお客さまにも伝わるのではないでしょうか。「あの工務店で働く人はなんとなくイキイキしてるな」という印象が広がることで、信用力の向上につながるからです。いつもバタバタとしている会社よりも、なんとなく落ち着いている会社の方が印象はよいはずですから。

「この業界で働きたい」と思える環境づくりを

―業務の効率化が社員や施工者のゆとりを生み出し、結果的には営業的な効果も生み出すということですね。

そうです。実際にANDPADを導入し、生産性の向上に成功している企業の多くは棟数も伸ばしているケースが多いです。さらに言うと、住宅業界全体が働く人を幸せにすることを意識しないと、人材の確保はますます難しくなるのでないでしょうか。働いている人が楽しそうでないと、「この業界で働きたい」とは思わないでしょうから。

住宅業界を見渡すと、工務店の2代目、3代目の若い経営者の方々が非常に独自性に富んだ取り組みを行っている事例が目立ってきているような印象があります。当社としては、ITに積極的な会社様に限らず、IT化を進めたいのだけども不安できっかけを失っている会社さまも支援して行きたいと考えています。住宅業界を面白くするような取り組みを進めていきたいですね。

―今後の事業方針などをお教えください。

現場管理だけでなく、営業や総務の仕事まで全ての業務を一元管理できるようなソリューションを、当社だけでなく関連するサービス企業の方々と連携して提供していきたいと考えています。さらに言うと、アフターサービスまで管理できるようにしていきたいですね。

とても大切にしている考え方なのですが、全てを自社で行わないということです。

見積作成ツールや設計ツール、会計システム、顧客管理システムなど、素晴らしいサービスがたくさんありますので、オープンに連携を行なっていきたいと考えています。検査やアフターなどでサービスを運営する会社さまとの連携を通じて、住宅会社さまの経営課題に寄り添うサービス提供を行なってまいります。

また、施工品質の向上につながるような取り組みも進めていきたいと考えています。効率化が実現したとしても、施工品質を犠牲にするような状況が生まれると意味がありません。例えば、蓄積されたデータなどを確認しながら、第三者が施工品質をチェックできるよう仕組みができれば、業務の効率化と施工品質の向上を両立できるはずです。

現在、1日に10万枚の施工写真がANDPADを通じてアップされています。AIなどを活用し、こうしたビッグデータを解析することで、施工品質を効率的に高めていくヒントが得られるのではないかとも考えているところです。

建設業界のIT投資額は、まだまだ低水準に留まっています。このことは、まだまだIT化によって業務を効率化する余地が残っていることを示しているのではないでしょうか。

また、クラウドコンピューティングによって、中小企業であっても、莫大なコストをかけることなく、大企業が利用しているようなシステムを活用できるようになってきています。

こうした状況を見据えながら、「幸せを築く人を、幸せに。」という理念を具現化できるような取り組みを進めていきます。

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