日頃から書きなぐっていた取材ノートや備忘メモに埋もれていた諸々を拾い、不定期で自由気ままに綴ってみようと思います。落ちこぼれた種から何か芽が出てくるかな——。

古川興一ブログ「落ち穂ひろい」

YKKの会見は、新型コロナ禍で動画配信 相談役に退く吉田忠裕氏、次に取り組むのは?

新型コロナウイルス禍は企業活動にも大きな影響を及ぼしているが、メデイア対応も例外ではない。記者会見も含めて中止、延期、規模縮小等々のアナウンスが連日届く。びっしり詰まっていたスケジュールの手帳が真っ白にーーーは冗談にも笑えない。だが本当は記者会見などメデイア対応はそんなに軽いものではない。どうしてもこの時期に情報公開しておかなければならないことも多い。ちょっと肩肘張るなら「不要不急」の記者会見などないといったほうがいいかもしれない。いわんや規模縮小とかで、会見でメデイア制限するなどの動きは悪評サクサクだ。日本記者クラブでも多くの記者会見予定が組まれているが、新型コロナを理由の会見中止はない。報道の社会的な重みであり、記者会見が持つ矜持でもある。

そんな新型コロナ騒ぎの中で、ちょっと話題を呼んだのが、YKKグループの経営方針説明会だ。年一回この時期に行われるもので、YKKが最も力を入れる記者会見だ。YKKグループの経営状況、経営計画、さらには人事などがグループ各社のトップから発表されるだけに、集まる記者も100人を超える。非上場会社がこれだけの記者を集め、経営状況を良くも悪くもさらけ出すというのは極めて珍しく、同グループの高い評価にもつながっているといっていい。そこにはYKKグループの情報公開に対するグローバル企業としてのまさに矜持を感じる。だが、今回の新型コロナ禍、どうするのか注目されていたが、出した答えが、メデイアへの動画配信だった。出席希望を出していたメデイア記者に対してPC画面を通じてグループ中核のYKKの大谷社長、YKK AP の堀社長が経営現況と2020年度経営方針を語る。説明資料は別途、メールでも配信された。一方通行の説明で、記者との直接の質疑応答ができないもどかしさはあったが、新型コロナ禍の中、精いっぱいの対応になったとみていいだろう。こういった動画での会見が状況によって今後、他社にも広がりそうな気もする。

YKKグループの経営状況についてはハウジングトリビューン誌に譲るとして、注目すべき役員人事の発表があった。YKK の2代目社長、YKK AP の創業社長で、今は取締役の吉田忠裕氏が今期限りで取締役も辞し、相談役に退くというのだ。社長、会長から、単なる取締役になった時も世間を驚かせたが、その取締役も今度は退くというのだから、びっくりだ。これまでだったら会見の場で、その意図、心境を聞いたことだろうし、吉田さんも思いのたけを語ったことだろう。それができなかったことは記者として残念だが、経営者として70歳代前半を節目と常日頃、話していた吉田さんらしい経営者美学も垣間見える。今後、記者としてその胸の内をじっくり聞いてみたいとは思うが、黒部で展開するパッシブタウンなどを手掛けるYKK不動産の社長などはそのまま務めるだろう。新たな街づくりに取り組むかもしれない。それどころか、人生100年時代、周囲をうならせる吉田ビジョンを掲げ、YKKのタガをも外し、社会貢献や文化の香りがする新たな事業に乗り出しそうな予感さえする。晴耕雨読なんて鞘に納まるはずのキャラでもない。吉田さんがこれからどうするのか、何をするのか、ちょっと楽しみだ。

2020年3月6日