日本の「美樹」巡りへの誘惑
楽しい朝日ウッドテックのWEBマガジン
企業の広報セクションなどから毎日たくさんのインフオメーションが送られてくる。まさに情報洪水で、その取捨選択に結構、時間を取られる。だが中には送られてくるのが楽しみなものもある。その一つが建材メーカーの朝日ウッドテックから送られてくるWEBマガジンだ。高級なフローリングのメーカーとして知られる同社だが、そのWEBマガジンは、単なる製品紹介の枠を乗り越え、同社にとっての生命線である「樹木」への深い愛情を感じられる楽しいものになっているからだ。不勉強な記者にとっては、いまさらながら教えられることも多く、記事を書くヒントになったりする。例えば、「美樹礼賛」というコーナーがある。全国各地の神社や寺院などを巡り、大樹や美樹を取り上げ、その樹にまつわる歴史や、いわれなどを解説している。
旅行したりしたとき、大樹に出会い、見上げながら敬虔な思いにふける。樹木には神が宿るのだ。子供のころ、何人もが数珠つなぎで大木を囲んで遊んだ人も多いだろう。大樹は、地域のシンボルであり、人々の待ち合わせの場所にもなっていた。
そんな大樹を紹介しているのが、このコーナーで、すでに20樹を超えている。最新は、奈良県の「大宇陀の又兵衛さくら(滝桜)」。樹齢は推定300年、樹高13m、幹周3mの枝垂れ桜だ。最近は観光名所となり、多くの人でにぎわうが、空を遮る、薄紅色の花霞、地上にも届きそうに垂れ下がる姿は圧巻だ。記者が訪れたのは20年以上前だが、今も、その姿は目に焼き付いている。WEBは解説する。宇陀市はその昔、宮廷の狩場であり、柿本人麻呂による万葉集の歌 ≪ひむがしの野にかぎろひの立つみえてかへりみすれば月かたぶきぬ≫ はこの地を訪れた時に読まれたものと。そして又兵衛さくらの名は、大坂夏の陣で敗れこの地に逃れた後藤又兵衛が住み、愛育した桜であることからという。これだけで、いっぺんに、万葉の世に、戦国の世のロマンに思いをはせることになる。一本の美樹が持つ歴史と文化の物語だ。新元号「令和」の出典は万葉集だ。又兵衛さくらに刺激され、万葉集を再読するのも悪くない。「美樹礼賛」の樹木をみると、そのすべてを巡る旅に出たくもなる。百名山もいいが、日本の百美樹の旅も魅力だ。地方の歴史と文化を訪ねる美樹紀行となる。
そんな想いを膨らませてくれる朝日ウッドテックのWEBマガジンには、ほかにも樹にまつわる樹と人との物語「樹種物語」や、木と楽器の世界を語る「楽器と木」といった魅力的なコーナーもある。記者も常々思う。新商品や新技術には必ず、その背景に人との物語がある。そんなつくり手の息遣いや愛着が感じられる、取材意欲をそそられるリリースがもっとあっていい。それは企業イメージにも響くはず。遊び心の感じられる会社って、働き方改革が問われる今、好感度アップは間違いない。朝日ウッドテックは最近「フローリング総合研究所」をサイト上に開設。「面白く、好奇心いっぱいに、心地よく健やかな毎日を足元から考える」ーーとか。その心意気や良し。奥深い、わくわくする樹の世界に誘ってほしい。
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