日頃から書きなぐっていた取材ノートや備忘メモに埋もれていた諸々を拾い、不定期で自由気ままに綴ってみようと思います。落ちこぼれた種から何か芽が出てくるかな——。

 

最強、最凶のアメリカ副大統領映画「VICE」

「記者たち」とは「表」と「裏」


前回のブログで米国映画「記者たち」を紹介したが、今回も映画の話。と言うのも『記者たち』と全く同じ時期に当たるホワイトハウスを扱った映画が4月に公開されるからだ。映画の名は「VICE」(バイス)。ジョージH・W・ブッシュ大統領のバイス、つまり副大統領のデイック・チェイニーを扱った映画だ。副大統領はいわば盲腸のようなもので、その存在に目を向ける人は少ない。『大統領の死を待つのが仕事』などとも揶揄される。だが、チェイニーは違った。影の大統領とさえ言われるほど権力を握り、ホワイトハウスを牛耳り、世界をも混乱させた。最強、最凶の副大統領との刻印が押されている。映画は、酒好きで大学も退学させられた、どうしようもない若者が、有能な細君の力も借り、政治家としてのし上がっていく姿を描く。それも表舞台に立つのではなく、お人よしの若いブッシュを操る闇将軍として辣腕を振るう。外交安全保障、エネルギー政策の権限を一手に握る。そのブッシュ政権下で最大の事件が9・11。政権基盤の弱かったブッシュ政権は政権浮揚にこの9・11テロ後に起こった愛国世論を利用、イラク侵攻に踏み出す。それを演出したのがチェイニーだった。

映画では彼がブッシュ大統領に『戦争の決断はあなたが下す』とイラク侵攻の決断を促す悪魔のささやきのシーンが出てくる。イラクをテロ国家とし、大量破壊兵器を保持する、生物化学兵器さえ使う懸念があると世界に訴えた。世界からの信頼が篤いパウエル国務長官を説得して、大量破壊兵器を保持するとの演説を国連安全保障理事会でさせた。このあたり、野望に燃える老練、狡猾なチェイニーの凄さを主役のクリスチャン・ベールが見事に演じる。

米国では今も、イラク戦争への悔恨の念が強いが、実際にはCIAの活動を含め謎が多い。なぜイラクだったのか。確かにイラクは豊富な石油資源を持つ。そしてチェイニーは世界有数の石油企業、バートンの元CEOだ。様々な憶測が生まれる理由でもある。

映画の紹介は脇に置くとして『VICE』がホワイトハウスと言う権力の中枢に踏み込み、イラク侵攻に突き進む姿を描き、『記者たち』が大量破壊兵器保持のファクト情報を暴く新聞記者の奮闘ぶりを描く。まさにイラク戦争について『表』と『裏』のようにほぼ同じ時期にまるで示し合わせたように映画化されたということが興味深い。日本記者クラブで2本の試写会が行われた理由もうなずける。そしてつくづく感じるのが、なんだかんだ言っても、米国には権力を監視し、検証する反骨心が、メデイアには健在と言うこと。

翻って日本はどうか。気骨のあるメデイアは影を薄める。首をすくめ、背筋の寒さを覚える面々も少なくないのではなかろうか。2本の映画は、権力の怖さ、メデイアの使命の何たるかを教えてくれる。骨太の政治、社会派の日本映画も観たい。

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