新たな工事管理手法の確立へ リモート管理によって施工品質と効率性の向上図る
実践企業に聞くDXツール活用法 ヒノキヤグループ (東京都千代田区)
ヒノキヤグループ
工事統括室 アシスタントゼネラルマネジャー
長宮 信行 氏
ヒノキヤグループ
上席執行役員 工事統括室 室長
田中 孝 氏
ヒノキヤグループは、桧家住宅、レスコハウス、パパまるハウスなどの住宅事業を展開しており、木造住宅からコンクリート造まで多彩なラインアップを用意している。2023年の販売棟数は4019棟となっている。
また、いち早く営業活動にLINE WORKSを活用するなど、DXに関する取り組みも積極的に進めている。DX推進室の萩原紀和室長によると、「定期的に各部門の担当者を集めて、DXに関する会議や打ち合わせ、研修をオンライン・オフラインともに開催しており、最新のGPT-4oを全社員が利用できるようにするといった取り組みも行いながら、業務改革を進めています」という。
現場監督が抱える問題点を集約
リモート管理システムの導入へ
ヒノキヤグループでは、営業や工事などそれぞれの部署でDXによる業務効率化や新たな顧客価値の創造に挑戦しているが、工事部門では施工管理の新たなモデルケースを形にしようとしている。現場監督の人材獲得競争が激化するなかで、同社では新たな人材獲得と既存の人的リソースの有効活用、さらには施工品質の向上などに向けて、管理業務が抱える課題などを洗い出した。2022年10月に全国の現場監督を集めた会議を開催し、日々の業務のなかで抱えている問題点や業務改革に向けた要望などをヒアリングしたという。
その結果、①工事監督の管理業務の効率化、②労働時間の有効活用、③点検担当者の管理業務の効率化という3つの課題を解決する必要があるという結論に至った。そして、この3つの課題を解決に向かわせる方策も検討し、実際の業務改革行動へとつなげていく作業をスタートさせた。その取り組みのひとつが、リモートでの現場管理システムの導入であった。
具体的には、log buildの「Log System」を導入。「Log System」は、リモートでの現場管理を可能にするDXツール。360度カメラと専用のアプリケーションを使用して、簡単で手軽に建築現場をVR化する「Log Walk」や、スマホ一つでリアルタイムに、誰でも簡単に現場と繋がる専用のアプリケーション「Log Meet」などを利用することで、遠隔での工事管理や検査などの業務を行うことができるというものだ。
検査回数の増加によって
施工品質に向けた現場の意識も変わる
「Log System」の導入について、同社上席執行役員 工事統括室の田中孝室長は、「現場管理の業務効率化や、労働環境の安全性を高めていくという目的もありますが、最終的にはこれまでとは全く異なる現場管理のあり方を構築したいと考えています。例えば、現場に行くことが難しくなったベテラン監督であってもオフィスで業務が可能になり、若い監督も魅力を感じてくれるような働き方を実現していきたいです」と説明する。
「Log System」の導入後は、「Log Walk」で現場の状況を撮影するようにしており、その画像を関係者間で共有している。また、「Log Meet」を活用し、協力施工業者に遠隔地から指示を出したり、オフィスにいるベテランの監督に現場にいる若手の監督が相談するといった形で活用を図っている。
加えて、施工品質の向上に向けた活用も行っている。ヒノキヤグループでは、第三者による現場検査を導入しているが、法制度などに関係しない施工品質などに関する社内基準については、担当の現場監督がチェックすることになっている。これによって、全国規模で品質の均一化を図ろうとしている。そのために、本部の担当者による抜き打ち検査を行い、社内基準を順守しているかを評価するようにしている。
その検査を担当している工事統括室の長宮信行アシスタントゼネラルマネジャーによると、「移動を伴うため年間で250棟くらいしか検査できていませんでした」という。しかし、「Log System」を導入してからは、リモートで検査を行えるようになったため、6倍以上となる1日9棟ペースで検査をすることが可能となったのだ。
また長宮アシスタントゼネラルマネジャーは、「検査回数が増えたこと以上に、担当の現場監督も自らの役割をしっかりと認識してくれるようになっています。また、協力業者の方々の品質管理に関する意識が高まったことが一番の収穫ではないでしょうか。若い現場監督も迷っていることなどを聞いてくれるので、人材育成という点でも良い影響をもたらしています」と語る。
一方で、「若い現場監督がベテランの職人さんなどに言いにくいことや、またその逆のケースでも、リモートで長宮アシスタントゼネラルマネジャーなどが双方に指示を出すことができるようになったので、現場のコミュニケーションの仲介役になっているようです」(田中室長)といった効果も出てきているようだ。
今後は、AIなどを活用した品質管理システムなども視野に入れながら、従来のやり方にこだわらない現場管理の手法を検討していく方針で、人がするべきことと、AIなどの方が適している業務などを見極めながら、さらなる現場DXを推進していこうとしている。
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