Webカメラを活用し複数の目で徹底管理 マンションの大規模改修工事の施工品質と安全対策を強化

実践企業に聞くDXツール活用法 東急コミュニティー (東京都世田谷区)

東急コミュニティー
リフォーム事業部 事業統括部 技術統括センター DX推進課
木村 優里 氏

全国で82万戸(※1)を超えるマンションを管理する東急コミュニティー。管理業務とともに事業の柱のひとつになっているのが、共用部のリフォーム事業だ。

日常の点検・診断から長期修繕計画、大規模改修工事までを管理会社ならではのワンストップサービスで対応しており、年間約300件のマンションの大規模改修工事を手掛けている。

同社では、大規模改修工事を行う際に、まずは安全・安心を最優先する方針を掲げている。居住者が生活している状態で行う大規模改修工事だけに、新築工事以上に安全・安心の確保が重要になる。

また、現場管理体制の強化を行うため、施工管理システム「Field’s EYES」(※2)の活用や品質管理部門のダブルチェックを徹底、推進している。

その他、24時間有人対応の自社コールセンターによる安心サポート、建物を最善の状態に保つ計画修繕の提案、充実の保証体制などを強みとしている。

※1)2024年3月末時点
※2)「Field’s EYES」は穴吹ソフトプラスが提供する「かん助」をベースとした東急コミュニティーオリジナルの施工管理システム。

東急コミュニティーでは、年間約300件のマンションの大規模改修工事を手掛けている

複数の目で徹底管理を実施
将来の人材不足に対応

東急コミュニティーでは、現場所長(管理者)、マネージャー、協力会社などの関係者がひとつのチームを形成しながら、現場の品質管理や安全対策を徹底している。

建設業法では、請負金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は、8,000万円以上)であれば、現場専任の監理技術者などの配置が必要になる。そのため、同社でも該当する工事の場合、有資格者を専任で配置している。また、監理技術者などの専任が不要な工事については、1人の所長が巡回しながら複数の現場管理を行うこともある。

同社リフォーム事業部事業統括部技術統括センターDX推進課の木村優里氏は、「建設業界全体で人材不足が深刻化するなかで、施工品質や現場の安全確保を維持していくためには、生産性を高めていくことが求められています」と、話す。

東急コミュニティーでは、施工品質管理基準の統一、品質確保の強化を目的とし、2016年から施工管理システム「Field’s EYES」の導入を開始した。統一された品質チェックシートなどを用いて施工品質の向上・均一化を図ることができるもので、現場の進捗状況や品質管理に関する情報や写真などをオンライン上で共有することができる。

同社では、施工品質と現場の安全性の担保を徹底するために、複眼管理を推進しており、このシステムを活用することで複数の担当者の「目」で管理を行うことが可能になる。

「現場見守る君」を導入したことで、より臨場感がある形で現場の状況を把握できるようになり、関係者間でのコミュニケーションも行いやすくなった
「Field’s EYES」の現場管理画面から、「現場見守る君」のリアルタイム動画を簡単に閲覧することができる

全現場にWebカメラを導入
より臨場感のある遠隔管理を

東急コミュニティーではさらに、「Field’s EYES」と吉田東光のネットワークカメラ「現場見守る君」との連携による管理体制の強化に取り組んでいる。「現場見守る君」は、必要な時だけレンタルすることができるネットワークカメラである。インターネット環境は不要で、電源に接続するだけで遠隔から工事現場の様子などをリアルタイムに確認できる。現場関係者は、「Field’s EYES」の現場管理画面から、「現場見守る君」のリアルタイム動画を簡単に閲覧することができる。

また、建設業法の改正によって、請負金額が1億円(建築一式工事の場合は2億円)を超えなければ、ICTなどを活用した遠隔施工管理を行うことを要件として監理技術者の兼任を認める制度が新設される予定だ。この法改正が施行になると、現場所長が兼任できる工事が増えることになる。

こうした背景を踏まえ、東急コミュニティーでは、人材確保が課題となるなかでの体制強化手法のひとつとして、原則、全ての大規模改修工事現場で「現場見守る君」を導入している。

前出の木村氏は、「これまでもField’s EYESを使うことで現場の写真を共有することはできていました。しかし、例えば所長が協力会社へ遠隔で指示を出す時などは、より正確に現場の状況を把握する必要があると考えていました。『現場見守る君』を導入したことで、より臨場感がある形で現場の状況を把握できるようになり、関係者間でのコミュニケーションも行いやすくなりました」と、話す。

また、現場の様子をいつでもリアルタイムに確認できるということは、現場で作業を行う協力会社や作業員への安全意識向上に繋がり、施工品質や安全管理の面で好影響をもたらすことを期待しているという。さらに、事故発生時には、記録映像にて状況を確認するとともに、再発防止策を講じることで、より安全な作業環境の実現を目指す。

デジタルツールを活用し複数の目で管理することによって、品質と安全を損なうことなく生産性を向上しようという東急コミュニティー。高経年マンションなどの問題も表面化しているだけに、新たな大規模改修工事の可能性を示す取り組みとしても注目が集まりそうだ。