事業継承を契機にツール導入 やり続けることで社内で様々な変革が発生

実践企業に聞くDXツール活用法 相羽建設 (東京都東村山市) 

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相羽建設
総務経理部 事務長
相羽 美里 氏

相羽建設
メンテナンス・リフォーム事業部 部長
佐々木 清 氏

東京都東村山市の相羽建設は、地域に密着しながら、大手ハウスメーカーには真似できない先進的な取り組みを進めている。DXにも積極的に取り組んでおり、2009年には基幹システムとしてシステムサポートの「建て役者」を導入している。「建て役者」は、建築業向け工事情報管理システムで、商談から工事、アフターサービスまでの情報を一元管理することができる。

メンテナンス・リフォームの拠点「あいばこ」。
家具デザイナーの小泉誠氏がデザインし、リフォームによって心地の良い「くらしごと」空間を実現
写真:Nacása & Partners Inc.

顧客情報を全社で共有
アフターサービスを“自分ごと化”

相羽建設では、2010年に創業者である相羽正会長から相羽健太郎社長に事業継承が行われた。その際に、事業エリアを拡大していくのではなく、地域に密着しながら戸建住宅の新築需要だけでなく、リフォームや非住宅建築など事業領域を拡大していく方針を打ち出した。地域密着型の多角化経営を進めていく上で、まず取り組んだのがメンテナンス・リフォーム事業部の創設だった。新築の戸建住宅が売上の9割を占めるという状況から、メンテナンス・リフォーム専門の部署を立ち上げ、オーナーとのつながりを強めることから取り組んだ。その際に重要になったのが、顧客情報の管理手法であったという。

それまでも顧客情報を電子化し、管理していたが、情報の内容は引き渡しまでのものが主であった。メンテナンスやリフォームなどの工事履歴や顧客とのコミュニケーション履歴などが適切に管理されているとは言えない状況にあった。

そこで「建て役者」を導入し、引き渡し後のオーナーからの問い合わせや修理依頼の情報などを一括管理する体制を構築し、社内で共有できるようにした。

しかし、導入当初は上手くいかないことも多かったという。メンテナンス・リフォーム事業部創設時からのリーダーである佐々木清氏は、「情報を建て役者に入力してもらうことを徹底するだけでも大変でした。また、スタッフの多くがどうしてもメンテナンスや引渡し後のサポートに対する意識が薄く、どこか他人事のような感じがありました」と当時を振り返る。

そこでメンテナンスや引渡し後のサポートを“自分ごと化”するために、SNSのグループツールを活用し、メンテナンスやリフォームなどに関する問い合わせや対応状況を全て全スタッフで共有することにした。その情報は当然ながら「建て役者」にも反映していく。

情報を共有することで、メンテナンスや引渡し後のサポートに対するスタッフの意識が高まっていき、引き渡し後のメンテナンス工事の内容を新築の設計担当者や社員大工が参考にするといった好影響をもたらしていく。
また、総務担当のスタッフが過去の対応状況などを参考にしながら、オーナーからの相談内容をヒアリングし、自らメーカーに修理依頼を行うといったことも日常化していく。「建て役者」を見ればどこのメーカーの、どの商品が採用されているのかをすぐに把握することができるので、対応スピードは格段に向上していったそうだ。

総務経理部の相羽美里 事務長は、「日常的に情報を共有し、建て役者に集約しているので、もちろん担当者と確認・連携をとりながらの作業にはなりますが、メンテナンス・リフォーム部に頼ることなく対応できる作業の幅は増えました」と話す。

点検やメンテナンスの場面でも「建て役者」で情報を確認してからオーナー訪問することを徹底している
総務のスタッフも「建て役者」で顧客情報を確認しながら、迅速な対応を図る

見積もりの統一化で利益管理も容易に

メンテナンス・リフォーム部では、「建て役者」を利用し、見積もりの統一化も図った。新築以上に見積もりを提出することも多いリフォーム工事だが、以前は各担当者がバラバラのフォーマットで見積もりを作成していたそうだ。その結果、各担当者が提出している見積もりの内容を管理者が把握できないだけでなく、利益率にもバラツキが出てしまうという問題があった。

そこで「建て役者」で見積書のフォーマットを統一し、なおかつその情報を共有するようにした。その結果、売上高や粗利の予測額を把握しやすくなり、財務的な面でもメリットが生まれはじめた。その後は新築部門でも同様の取り組みを導入し、全社的な売上や粗利の予測額を把握することが容易になったそうだ。

「時間をかけることなく財務的な指標を出力することができるので、経理的な側面でも大変助かっています。『建て役者』がない状況を想像できないまでになっています」(相羽事務長)。

加えて、「一年間のどの時期に、どのようなメンテナンス工事が増えている」といった分析も容易に行えるため、今後はこうしたデータを活用していくことも検討しているという。

いち早く「建て役者」を導入し、業務改革に取り組んできた相羽建設だが、佐々木氏は「まずはツールを使い倒すことが重要ではないでしょうか。多少、時間はかかるかもしれませんが、やり続ければメリットが目に見える形で出てくるようになります」と経験談を話す。

相羽建設の事例は、まさに継続の先に様々な変革が社内で生まれてくることを証明している。