オピニオン |  2019.11.20

お湯利用市場の拡大 給湯器の市場変化が続く

近年の住宅部品の実態を観る 第2回

はじめに

お風呂多様化時代からお湯利用の時代へ

風呂文化研究会が「わが家のお風呂50年史」を発行したのは、1996年である。昭和20年代から昭和60年代・平成以降までを5つの時代に分け、戦後のお風呂に関わる生活文化を紹介している※1。

この冊子によると、昭和60年代・平成以降の時代を「お風呂多様化の時代」としている。全自動制御で、風呂追い焚きと給湯が一体になった機器が市場に出て、能力も十分に整い、朝シャンに見られるように、生活者のお湯利用方法が様々に変わりつつある時代であった。この時代から更に20年経過した現在は、どのようなお湯利用の時代といえるのだろうか。

給湯利用機器の出荷台数推移

急速な技術開発でシステムが混在する市場

給湯利用機器は、都市ガスや電気、灯油等のエネルギー及び給排水設備(いわゆる水・電気・ガスのインフラ)が整っていなければ機能を発揮できない。しかも、一日の中で使用するエネルギーや給排水量は大きく、使い方も多様であり、住宅の基本設計における熟慮が必要な設備である。水道やエネルギー使用消費量において住生活(家計)に与える影響が大きな住宅部品なのである※2。

この給湯機器は、戦後長足な進歩を遂げたが、都市ガス、電気、灯油が競って機器の開発改良を行って技術の向上に貢献してきた。多くの試行錯誤を通じ、様々な機器やシステムが市場に投下され、淘汰された。この結果、戦後の住宅には、多様な機器やシステムが混在し、現在も多くの機器方式が残っている。瞬間式小型給湯機(いわゆる元止式)、瞬間式大型給湯機(いわゆる先止式)、貯湯式給湯機等お湯を作り出す構造が異なる機器。風呂追い焚きのみ(風呂釜)、風呂追い焚きと給湯が一体となった風呂給湯機、暖房利用ができる給湯暖房機、太陽熱を利用して給湯を行うシステム、発電機能があり排熱を給湯として蓄え利用できる燃料電池コージェネレーション等がある。

近年の給湯機器の出荷台数の推移を図1に示す。図に分類されている給湯機器を表1に説明する。なお、出荷台数統計は、一部自主統計資料のデータを用いているので、表1にそれらを記載した。

この図1から近年の給湯機器の出荷台数推移の特徴を見ることができる。

①年間450万台以上出荷されている(新築住宅着工数の5倍以上)。
②都市ガス及びLPガス機器が圧倒的に多く、8割弱を占めている。
③ガス瞬間式給湯機(給湯のみを供給する先止式)が毎年200万台程度出荷されている。
④風呂給湯、給湯暖房機等給湯と風呂追い焚きができる全自動(準ずる機器も含め)機器が年間180万台程度出荷されている(後述図4参照)。
⑤電気CO2ヒーポンを中心に電気給湯機器は50万台程度あるが、近年頭打ちである。
⑥灯油給湯機は、電気給湯機の普及で減少している。
⑦太陽熱利用機器(太陽熱温水器及びソーラーシステム)は、1980年代、1990年代に話題となったが、普及が進んでいない。

図1 給湯機器の出荷台数推移
表1 出荷台数統計の給湯種類※3

給湯機器の普及を探る

出荷台数推移は新設着工に無関係

現在の給湯機器は、年間450万台以上出荷されている。これは、単純に計算すると総世帯数5400万世帯に対し、10数年に一回程度、総取り換えをしている数字である※4。しかもこうした台数は20年以上にわたり維持している。一般社団法人リビングアメニティ協会では、主な住宅部品の交換時期を探るために住宅部品の残存率等推計調査を行っている※5。この中で、ガス、石油、電気給湯機についても調査しており、その残存率は17年強との結果を出している。近年は、多くの住宅部品がより長期にわたり使用される傾向にある。

起動部分等摩耗部品や制御機構を抱える給湯機でも従来予想の10年程度をかなり超えて15年もしくはそれ以上使用される場合も増えているようだ。この残存率調査の数値から、現在の給湯機のストック数を推計すると6000万台程度となり、総世帯に1台程度もしくはそれ以上設置されていることになるとともに、十数年使用されるのは妥当な数値に思える。同調査で、給湯機の故障、修理は、他の住宅部品に比べ若干多い傾向にあるが、それでも長期にわたり使用されることに影響はみられない。

さて、給湯機の新築住宅着工数との関係や住宅リフォーム市場規模との関係も見ておきたい。

現在の給湯機の出荷台数推移は、新築住宅着工数との間にほとんど関係はない。むしろ住宅リフォーム市場規模との間に関係が見られる。給湯機は新築住宅には、おそらくほとんど全てに設置されるが、それ以上に改修時や故障などにより多く取り換え等が行われ、その影響が相関係数に表れているようである※6。

風呂釜の普及傾向について

今後10年以上残るBF、CF、RF風呂釜

日本は独自の風呂文化の国であり、風呂釜は戦前戦後を通じてお湯利用における大きな位置づけにある。生活価値が多様化しても多くの日本人は、いまだに浴槽に湯を満たして浸かり、そこでリラックスする。家族で入浴を楽しむ。時には温泉にも行って更に入浴の良さを満喫する。夏でも入浴しなければ気が済まない人も多い。このため、シャワー入浴が増えたとされる現在においても給湯機の機能として風呂追い焚きは欠かせない。ノーリツから風呂全自動が開発されたのは1980年代であるが、その後、この機能は競うように多くの給湯システムに採用されている。それだけに給湯機の省エネ評価においても、給湯供給としての評価に加えて風呂追い焚きについての評価も重要である※7。

戦前、薪で焚く風呂に対し、ガスによりすばやくお湯を沸かすことができる風呂釜は画期的な器具であった。戦後、公団を中心に内風呂化が進み、我が家のお風呂が定着していく。旺盛な住宅需要、生活改善の要望から、給湯機器は次第に大型化して、複数個所で給湯が利用できるようになった。風呂釜も煙突型(CF)から給排気型(BF)、そして屋外設置型(RF)に変わっていった。やがて給湯機と風呂釜が統合化されるようになる。給湯機から風呂に湯を供給した後で、設定した温度に調整を図るため風呂釜で追い焚きをする現在の全自動化運転に結びついていった。

現在の風呂釜を中心に出荷台数推移を見てみよう。図2は、ガス風呂釜(現在は追い焚き機能しかない風呂釜よりも風呂給湯機が中心)、ガス瞬間式給湯機(複数個所に供給できる先止め方式)及びガス瞬間式給湯機(元止め式で小型湯沸器として、台所、洗面所等一か所のみ給湯)の出荷台数推移である。ガス瞬間式給湯機(先止)は、200万台もしくはそれ以上出荷され、ガス風呂釜は一時期150万台を割ったが、再び伸びる傾向にある。一方、ガス瞬間式給湯機(元止)は、減少傾向が続く。図1からも分かるように、現在の給湯機器市場の中で、中心を成すのは、ガス風呂釜であり、ガス瞬間式給湯機(先止)である。

図3に、ガス風呂釜の追い焚き機能による出荷台数推移を表す。風呂追い焚き方式は、BF風呂釜等に多く見られる自然循環方式(浴槽と風呂釜との間に2本の45㎜程度の循環パイプを介して浴湯を熱交換器により温める)、風呂給湯機に多い強制循環方式(循環ポンプにより、浴湯を直接熱交換器に導いていわば強制的に温め浴槽に戻す。浴槽から離れた場所に風呂釜を設置できる)、高温差し湯式等があるが、ガス風呂釜は、強制循環型が多いことがわかる。

図2 ガス風呂釜、ガス瞬間式給湯機(元止)、ガス瞬間式給湯機(先止)の出荷台数推移
図3 ガス風呂釜強制循環型及びBF型、CF型、RF型の出荷台数推移※8

ここで、注目してほしいのは、BF、CF、RF風呂釜が現在でも出荷されていることである。その年間出荷総計はようやく10万台を下回ってきた。しかし、現在設置された機器は、今後10年以上使用される。これらの機器の熱効率は70~75%程度で、使用していないときにも浴湯の温度を放熱させ下げてしまう。可能であれば強制循環型に代えてほしいが、建物との取り合いや建物寿命との関係もあって、まだしばらく残りそうである。同じことは、電気温水器にもいえる。電気温水器の熱効率が低いことは、よく知られたことであるが、まだ10万台弱出荷されている。給湯機器は、こうした建物との取り合い、交換のしかたが極めて重要であること、省エネルギー化を進めることは急にはできないことを改めて認識させるのである。

浴湯制御を確実に

6割の機器が湯温を制御できず

全自動風呂釜の開発は、浴室安全に大きく貢献した。空焚きが無くなったこと、浴槽の湯をあふれさせることがなくなったこと、設定に応じてお湯の温度を変えるのが容易になったこと等である。全自動風呂釜を使う家庭も増えた。そして、現在期待されるのは、入浴時の湯温を41℃以下とすることである。冬季の浴室における不幸な事故を防止するための手段として、浴湯の制御が重要となりつつある。そこで、これらの制御が容易にできる給湯機器についてまとめてみた。強制循環型等、浴湯を自動で制御できる機器である。図4にこうしたタイプの機器をまとめた。電気CO2ヒーポン等でも一部可能な機器が増えてきているが、図4には加えていない。これから分かることは、現在4割程度の給湯機器が対応できるが、逆に言えばまだ6割の機器は、入浴する場合に生活者がお風呂の湯温に神経を使わなければならないことである。

図4 浴湯の温度制御が容易な機器の出荷台数推移とその割合※9

※1 「わが家のお風呂50年史」風呂文化研究会編 1996年6月発行

※2 給湯シャワーを10分間使用(毎分14リットル、42℃出湯、冬季水温10℃)とした場合に、ガス代がおよそ53円(東京ガス一か月平均50㎥使用の場合で計算)、上下水道代がおよそ52円(東京都水道局上下水道料金一か月平均40㎥使用で計算)になる。お湯利用は、ガス等のエネルギー代ばかりでなく、上下水道代もばかにならない。

※3 本出荷台数統計には、ガス小型瞬間式給湯機(元止式)を除いている。元止式は、台所や洗面所等で使用される一か所給湯器具であり、戦後の一時期普及が進んだが、現在では複数個所給湯が主流としており、図1には加えていない。なお、図2で現状出荷数推移を説明している。

※4 「日本の世帯数の将来推計(2018年推計)」国立社会保障・人口問題研究所 2018年1月12日

※5 「2018年度住宅部品の残存率等推計調査報告書」一般社団法人リビングアメニティ協会 2019年3月

※6 給湯機総計と住宅着工数との間の相関係数は0.1872(2007~2016)、住宅リフォーム市場規模との相関係数は0.7599(2007~2016)。ただし、細かく見ていくと、住宅着工数の中で持ち家と風呂釜(風呂給湯)との間の相関係数は0.8272(1989~2017)とかなり強い関係にあり、興味深い。元止給湯機との間にも強い相関関係がみられる。

※7 全自動風呂釜が開発されたのは1983年。追い焚き機能の省エネ評価は、瞬間方式の場合には、追い焚き熱効率で評価される。給湯時の熱効率より若干低い。電気CO2ヒートポンプシステムのような貯湯式の場合は、追い焚きに高温水を利用するが高温水をつくる過程の熱効率は定常熱効率よりかなり低くなる傾向にあり、留意が必要。

※8 図3は、一般社団法人日本ガス石油機器工業会自主統計データを用いて分析し作成した。

※9 図4は、経済産業省生産動態統計及び一般社団法人日本ガス石油機器工業会自主統計データを用いて作成した。

全文を読むにはログインまたは無料会員登録が必要です

Housing Tribune Online無料会員とは?

無料会員登録済の方
新規ユーザー登録
*必須項目