お湯利用市場の拡大 給湯器の市場変化が続く

近年の住宅部品の実態を観る 第2回

はじめに

お風呂多様化時代からお湯利用の時代へ

風呂文化研究会が「わが家のお風呂50年史」を発行したのは、1996年である。昭和20年代から昭和60年代・平成以降までを5つの時代に分け、戦後のお風呂に関わる生活文化を紹介している※1。

この冊子によると、昭和60年代・平成以降の時代を「お風呂多様化の時代」としている。全自動制御で、風呂追い焚きと給湯が一体になった機器が市場に出て、能力も十分に整い、朝シャンに見られるように、生活者のお湯利用方法が様々に変わりつつある時代であった。この時代から更に20年経過した現在は、どのようなお湯利用の時代といえるのだろうか。

給湯利用機器の出荷台数推移

急速な技術開発でシステムが混在する市場

給湯利用機器は、都市ガスや電気、灯油等のエネルギー及び給排水設備(いわゆる水・電気・ガスのインフラ)が整っていなければ機能を発揮できない。しかも、一日の中で使用するエネルギーや給排水量は大きく、使い方も多様であり、住宅の基本設計における熟慮が必要な設備である。水道やエネルギー使用消費量において住生活(家計)に与える影響が大きな住宅部品なのである※2。

この給湯機器は、戦後長足な進歩を遂げたが、都市ガス、電気、灯油が競って機器の開発改良を行って技術の向上に貢献してきた。多くの試行錯誤を通じ、様々な機器やシステムが市場に投下され、淘汰された。この結果、戦後の住宅には、多様な機器やシステムが混在し、現在も多くの機器方式が残っている。瞬間式小型給湯機(いわゆる元止式)、瞬間式大型給湯機(いわゆる先止式)、貯湯式給湯機等お湯を作り出す構造が異なる機器。風呂追い焚きのみ(風呂釜)、風呂追い焚きと給湯が一体となった風呂給湯機、暖房利用ができる給湯暖房機、太陽熱を利用して給湯を行うシステム、発電機能があり排熱を給湯として蓄え利用できる燃料電池コージェネレーション等がある。

近年の給湯機器の出荷台数の推移を図1に示す。図に分類されている給湯機器を表1に説明する。なお、出荷台数統計は、一部自主統計資料のデータを用いているので、表1にそれらを記載した。

この図1から近年の給湯機器の出荷台数推移の特徴を見ることができる。

①年間450万台以上出荷されている(新築住宅着工数の5倍以上)。
②都市ガス及びLPガス機器が圧倒的に多く、8割弱を占めている。
③ガス瞬間式給湯機(給湯のみを供給する先止式)が毎年200万台程度出荷されている。
④風呂給湯、給湯暖房機等給湯と風呂追い焚きができる全自動(準ずる機器も含め)機器が年間180万台程度出荷されている(後述図4参照)。
⑤電気CO2ヒーポンを中心に電気給湯機器は50万台程度あるが、近年頭打ちである。
⑥灯油給湯機は、電気給湯機の普及で減少している。
⑦太陽熱利用機器(太陽熱温水器及びソーラーシステム)は、1980年代、1990年代に話題となったが、普及が進んでいない。

図1 給湯機器の出荷台数推移

表1 出荷台数統計の給湯種類※3

給湯機器の普及を探る

出荷台数推移は新設着工に無関係

現在の給湯機器は、年間450万台以上出荷されている。これは、単純に計算すると総世帯数5400万世帯に対し、10数年に一回程度、総取り換えをしている数字である※4。しかもこうした台数は20年以上にわたり維持している。一般社団法人リビングアメニティ協会では、主な住宅部品の交換時期を探るために住宅部品の残存率等推計調査を行っている※5。この中で、ガス、石油、電気給湯機についても調査しており、その残存率は17年強との結果を出している。近年は、多くの住宅部品がより長期にわたり使用される傾向にある。

起動部分等摩耗部品や制御機構を抱える給湯機でも従来予想の10年程度をかなり超えて15年もしくはそれ以上使用される場合も増えているようだ。この残存率調査の数値から、現在の給湯機のストック数を推計すると6000万台程度となり、総世帯に1台程度もしくはそれ以上設置されていることになるとともに、十数年使用されるのは妥当な数値に思える。同調査で、給湯機の故障、修理は、他の住宅部品に比べ若干多い傾向にあるが、それでも長期にわたり使用されることに影響はみられない。

さて、給湯機の新築住宅着工数との関係や住宅リフォーム市場規模との関係も見ておきたい。

現在の給湯機の出荷台数推移は、新築住宅着工数との間にほとんど関係はない。むしろ住宅リフォーム市場規模との間に関係が見られる。給湯機は新築住宅には、おそらくほとんど全てに設置されるが、それ以上に改修時や故障などにより多く取り換え等が行われ、その影響が相関係数に表れているようである※6。

風呂釜の普及傾向について


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