住宅部品市場の過去と現在

近年の住宅部品の実態を観る 第1回 

住生活の現状を、様々な住宅部品の視点から考えたい。そして、近い将来の住宅及び住宅部品等住宅産業について考えを深めたい。

典型的なストック産業である住宅は、過去の生産結果による影響を強く受ける。そこで、統計による生産、出荷推移等通じ、また、様々な調査研究等を通じ現状を分析してみる。個々の住宅部品の特性、住宅や他部品との関係等から個々の住宅部品における近い将来を考えてみる。生活に与える影響が大きいと思われる給湯機器、キッチン、浴槽、開口部品等の住宅部品について順次取り上げ、シリーズとする予定である。


はじめに

使い古した設備も今の生活に深くかかわっている

戦後、住生活に大きな影響を与えたものとして、炊飯器、洗濯機、冷蔵庫、テレビ等がすぐ上げられるであろう。しかし、これら家電製品と劣らないくらいに住生活に影響を与えた住宅部品も数多い。

現在から見ると、戦前はどのような生活をしていたのか想像することができないくらいである。新しい住宅生活改善運動が起こったとされる大正時代に、人々はどのような生活をしていたのであろうか。※1

現在の住生活を見た場合に、最も重要であるのは、一般の人々の生活に広く住宅部品や家電製品が普及していることである。一部の特権階級の人たちや貴族が、豪勢な生活の中で使うような限られたものでなく、日常普通の暮らしをする人たちが、苦労することもなく使えるもの。それが現在の家電製品であり、住宅部品である。

このためには、これらの機器の開発、改良が繰り返し行われてきた。そして、それらが一斉に花開くためには、それなりの技術的な基盤があった。また、それらを普及定着させるための努力があった。

そして、もうひとつ考えておかなければならないのは、戦後の家電製品や住宅部品の開発改良や販売を通じて広く普及したものが、最新のものでなく、かなり使い古したものまで、幅広く住生活に関わっていることである。浴槽やユニットバスは、30年程度は使われているものも多い。風呂釜でも20年以上使われているものもある。つまり、現在を見る場合には、過去に普及したものの動向にも目を配らなければならない。

住宅部品等の機能が成熟して、それらを利用する普通の人たちも習熟した生活を営む現在において、近い将来を展望した場合に、現在の住宅部品の実態をいくつかの方向から観て、研究しておくことは、重要なことである。一見、表面には表れていないことでも、いくつかのデータによる関係性を見ると近い将来を考えるヒントになる。こうしたことから住宅部品の現況を整理しておきたい。

図1 住宅部品市場規模の推移
表1 住宅部品分野別の商品

住宅部品産業全体を概括する

住宅部品市場規模は住宅投資額の3割弱

住宅部品産業の範囲を住生活に限定して捉えるのは容易ではない。給湯機にしても業務用利用があり、換気扇や浄水器等のように業務用としての使用の方が多い場合もある。しかし、ここでは、一般社団法人リビングアメニティ協会が統計で取りまとめた住宅部品産業を一例として取り上げることにする。※2多くの住宅部品の統計処理が継続して行われており、全体傾向を把握することができ、将来展望に役立つ。また、住宅用及び業務用使用等についても、各分野別にメーカーの経験等から大方の把握がされているからである。個々の住宅部品の動向を探るにあたって、住宅部品産業全体の動向は、新築住宅着工やリフォーム産業規模、あるいは景気動向との関係において、ある程度の影響があると予想されたことから、まずはそれらを捉えて見たい。

新築住宅着工は、ここ10年程度は比較的堅調に推移している。新築住宅着工は、早晩100万戸を大きく割ると想定されていたが、その減少は大方の予想より少ない範囲にあると思われる。その要因は、貸家の増加等様々に挙げられているが、ここでは、新築着工数の推移と住宅部品産業の推移との関係を見ることにとどめたい。※3

住宅部品産業の近年の推移は図1の通りである。一般社団法人リビングアメニティ協会では、各住宅部品を表1のように分けて、それぞれの市場規模を算出している。これらの結果から、ここ10年程度の住宅部品市場規模は、4兆円から4・7兆円で推移している。その中で、給湯・暖房・冷房分野の規模が大きく、かつその規模の拡大傾向が続いている。次いでキッチンルーム、開口部品の順に市場規模が大きいが、近年はほとんど同規模で推移していることが分かる。なお、2009年に住宅部品市場規模が、ダウンしているのは、リーマンショックの影響である。

図2に示すのは、住宅着工数、住宅投資額、住宅リフォーム市場規模、住宅部品市場規模総計、住宅部品総額/住宅投資額それぞれの関係である。住宅投資額と住宅着工数との間には極めて強い関係があることが分かっている。住宅部品市場規模総額と住宅投資額との間にも強い関係は見られるが、住宅リフォーム市場規模と住宅投資額との間の関係は弱い。また、住宅投資額に対し、住宅部品市場規模総額は、約3割弱であり近年はほとんど変わってはいない。※4

図3に新築住宅着工数と名目GDP前年比割合との関係を示す。リーマンショックにおける減少変化はあるが、住宅着工数と名目GDP前年比割合との間には、強い相関関係があることが知られている。近年の住宅産業はGDPに対する影響が次第に薄れてきているようにも見えるが、それとの関係は維持しており、住宅部品産業においても無関係ではいられないことが分かる。

今までの住宅部品産業から今後を見る

着工戸数の影響は25年後にリフォーム市場に現れる?

わが国では、膨大な住宅ストックがあり、その有効活用が住宅産業活性化の上でも豊かな住生活実現の上でも極めて重要である。しかし、膨大な住宅ストックを活かす産業として期待される住宅リフォーム産業の市場規模は、大きく伸びてきているとはいえない。また、各市場調査においても、今後の見通しは明るいものではない。※5

すでに見てきたように、住宅リフォーム市場規模と住宅部品市場規模との間には、強くはないが無視できない関係がある。しかし、住宅着工数や住宅投資額と住宅リフォーム市場規模との間には、関係は見られない(図4参照)。このことが、長い間疑問であった。住宅着工数の変化や住宅投資は、いずれ住宅ストックとして住宅リフォームに関与してくるからである。そこで、様々にデータを探り、その関係性を見た。その結果、見えてきたのは25年程度経過した時に関係性が強くなるということであった。サンプルとするデータ間(年度間)で、その関係が必ずしも明確でない場合もあるが、総じて図5に示すように新築着工計上した年度から8年前後期間がずれた時、及び25年前後期間がずれた時、住宅着工数と住宅リフォーム市場規模とのデータ間にかなり強い関係が生じていることが見て取れる。このことは、住宅リフォームの市場実態からある程度推察できる。※6リフォーム市場を牽引しているのは、主に50代以上であり、住宅購入後では20年程度経過(マンションの場合は経過年数が15年程度)して行う場合が多い。住宅リフォームは、一部住宅部品等の取り換え、修繕のような、簡易工事と、浴室やキッチンの全面改修、あるいは屋根や壁面修繕、一部増改築のようにかなり金額のはる工事がある。簡易な取り換え等は住宅部品の故障等が契機となり実施するが、大規模な改修は、かなり計画的に考えて実施しているのであろう。こうしたことを考えると、25年前後経過した時点での関係性は意味があるように思える。

さらに言えるのは、こうした新築着工との関係性からみた場合に、現在のような状況が続く限り、住宅リフォーム市場規模の拡大は期待できないことである。住宅リフォーム市場が、現在のように生活者が改修する家を前提としたリフォーム(居ながらリフォーム)が中心である場合には、どうしても新築からの一定期間を経て家を直すという生活者ニーズ等に大きく作用されるからである。これが、欧米各国のように、既存住宅流通が盛んな場合には、もっと異なった将来の市場規模が描けるかもしれないが、乱暴な議論をするなら、近い将来の住宅リフォーム市場規模は、今から25年程度以前の新築着工数をみれば、かなり見当がつく。現時点から見ると1990年代初期には140万戸もの新築住宅が作られたが、その状況において現在の住宅リフォーム市場規模は7兆円弱である。1990年代の新築着工は、その後120万台前後に推移しており、こうしたことから、リフォーム市場規模は現在の規模を上回るのは相当難しいと見てもよさそうである。

図2 住宅部品市場規模総計と住宅投資額等との関係
図3 新築住宅着工数と名目GDP前年比較割合との関係

各住宅部品を見ると

住宅部品の長期使用が市場にも影響

さて、住宅部品の市場規模と住宅着工数、住宅リフォーム市場規模等の関係を見てきたが、個々の住宅部品に目を転じると、その動向はかなり異なる。

これらの住宅部品の動向について、次回以降取り上げたい。

住宅と同様に、住宅部品も長期にわたり使用されるようになってきており、そうしたことも市場性に影響を与えている。こうしたことを個別に確認した上で、さらに今後の住宅産業について考えてみたい。

図4 住宅着工数推移と住宅リフォーム市場規模推移との関係
図5 住宅着工数と住宅リフォーム市場規模の年度期間ずれによる相関係数変化

1 図説・近代日本住宅史 内田青蔵他 鹿島出版会 2001年 住宅改良運動の展開等を参照

2 2018年版住宅部品統計ハンドブック 2018年10月 一般社団法人リビングアメニティ協会のデータを参照した。

3 本稿において、住宅着工数の推移は数多くの住宅部品との関係性において分析して示される。多くの住宅部品は、新築住宅に設置されるので、その関係性が強いのは、ある程度予想されるのであるが、普及程度は住宅部品によって異なるので、それぞれの関係性を整理することは重要である。

4 住宅投資額と住宅着工数との間の相関係数(2008から2017年間)は、0・9915と極めて強く、住宅部品市場規模と住宅着工との相関係数は0・8 1 7 6、住宅投資との間では0・8565であった。一方住宅部品市場規模と住宅リフォーム市場規模との間は、0・6993であり関係は見られるが、住宅リフォーム市場規模と住宅投資、住宅着工数の間には関係は見られなかった。

5 住宅リフォーム市場規模調査は、矢野経済研究所等が毎年のように実施。今後の見通しは大きくは伸びないと予想。野村総合研究所は、2018年6月に2008年から2030年のリフォーム市場規模を6〜7兆円台で横ばい推移すると予測した。

6 例えば「平成27年度第13回住宅リフォーム実例調査報告書 平成28年3月 一般社団法人住宅リフォーム推進協議会」によれば、住宅リフォーム調査に関わる築年数は戸建て26年以上が5割強、マンションで築後21年以上の比率が増加しており6割強となっている。年代も50歳代以上が圧倒的に多く、リフォームまでの居住期間も戸建て21年以上が6割、マンションは4割弱に達する。

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ハウジング・トリビューンVol.606(2020年18号)

特集:

地に足のついた営業で一足先に受注回復へ

新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言解除から3カ月が過ぎた。
一時は休業停止に追い込まれた数多くの住宅展示場も客足が戻りつつある。
客との対面でのやりとりができなくなる中、住宅メーカー各社が緊急対応として取り入れたオンラインによる打ち合わせやVRなどの導入によるWebの強化策。
2ケタ台の落ち込みが相次ぐ7月に、一足早く前年対比を上回ったメーカーから見えてきたのは、地に足のついた営業姿勢だった。
一部では非対面での住宅営業が進むとの見方もある中、他よりも一足早く受注が回復したにメーカーでは、「地道に丁寧な営業を重ねた結果で、奇をてらった対応はしていない」と口をそろえる。

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