New   2026.10.6

“無味・無臭”ではない不動産事業とは― プロフィッツが挑む『眠れる不動産』の価値創造戦略

 

プロフィッツ(田中慎一郎社長、東京都千代田区)は、約352兆円の市場に眠る「未流通アセット」の不動産価値創造戦略を強化する方針を明らかにした。同社の田中社長が語る「“無味・無臭”ではない不動産事業」とは、どのようなものなのだろうか―。

350兆円にまで成長した不動産投資市場 求められる経済性と社会性の両立

ニッセイ基礎研究所と価値総合研究所の調査によると、日本における「収益不動産」の資産規模は約 352.1 兆円に達しており、前回調査時(2024年度)から37兆円増加している。

また、国土交通省の「不動産証券化の実態調査」によると、証券化の対象となった不動産の資産総額は、2015年調査時の約 29.9 兆円から2024年には約 66.6 兆円まで増加しており、この10 年間で市場規模は2倍以上拡大していることになる。

不動産投資市場は、今や日本経済をけん引する存在になっているというわけだ。

1年間で動く不動産は350兆円の約1.8% 未流通アセットが示す課題と可能性

アセットマネジメント事業や不動産流通化事業などを手掛けるプロフィッツは、これまでに4,000億円を超える不動産投資を行い、現在、1,640億円の運用資産を保有している。

同社の事業モデルは、一般的な不動産投資事業とは異なる。その点について田中社長は、「“無味・無臭”ではない不動産事業」と表現する。そして、その言葉を具現化する事業が「未流通アセット」の不動産価値創造戦略である。

約352兆円の不動産投資市場のうち年間で動く金額は、全体の1.8%に過ぎないという。プロフィッツでは、残り98%の収益不動産ストックの中にある「未流通アセット」の可能性を追求しようとしている。

「未流通アセットとは、売買市場には出ていなが、磨けば面白くなる不動産。その多くは、何らかの課題を抱えているが、その課題に気付いてさえいません」(田中社長)。

プロフィッツの田中社長は「「未流通アセットとは、売買市場には出ていなが、磨けば面白くなる不動産」と話す。

同社では、その課題を取り除き、未流通アセットに新しい価値をもらすことで、“眠れる不動産”を蘇らせようとしている。

その好例が、横浜の中華街にあった飲食店として活用していた建物をホテルにリノベーションした事例。

「飲食店が数多く存在する中華街において、そもそもこの地域で何が求められているかということから考えました。飲食店として活用しても、それなりの収益は得られたでしょうが、“中華街に宿泊する”という体験価値を提供した方がいいのではないかと考えたのです」(田中社長)。

小山薫堂氏が社長を務める、「場」や「食」の企画で多くの実績を持つオレンジ・アンド・パートナーズと協働し、「ここでしか味わえない体験価値」を追求するための企画を検討。2025年11月に「トランセンダーホテル横浜」をオープンした。

オープン後の1室当たりの収益が事前計画比2.8%増となるなど、上々の滑り出しを見せており、今後はまず稼働率の向上に注力していくという。

潜在的な需要があるものの、横浜・中華街に不足していた「泊まる」という機能。「トランセンダーホテル横浜」は、未流通アセットに新たな価値を付与することで、この不足していた機能を街にもたらしている。

飲食店ビルをコンバージョンし、2025年11月にオープンした「トランセンダーホテル横浜」。横浜中華街に不足していた宿泊機能をもたらす。

プロフィッツでは、今後、未流通アセットの不動産価値創造戦略を強化していく。

「未流通アセットは『価値のない不動産』ではなく、価値の『生み方』が見つかっていない不動産です。こうした不動産を『物件』ではなく、『事業』として捉え、活用方針の検討から不動産の可能性を検討していきます」(田中社長)。

同社のチャレンジは、不動産投資市場において経済性と社会性を両立させる可能性を秘めている。未流通アセットにその地域で必要とされている機能を付与することができれば、不動産投資市場に流れ込む資金を社会課題の解決に活用できるかもしれないからだ。

課題もある。「色々なアセットの売却に関する相談を受けますが、正直、再生が難しいものもあります」と田中社長が話すように、全ての停滞したアセットに価値をもたらすことは困難であろう。

その一方で世な中にはもったいない状況になっている未流通アセットが数多く存在している。そうしたアセットを無味・無臭の空間ではなく、地域を豊かに、そして楽しくするために温度感のある空間に再生していくことができれば、不動産投資市場の社会的な評価はさらに高まっていくのではないか。