2020.6.19

経済社会活動の正常化にむけ、攻めの感染防止戦略を提言

11月までに一日20万件の検査・医療体制の整備を 経済・医療・スポーツなど各界100人余の連名

緊急事態宣言が解除され、恐る恐るながら社会・経済活動が再開しているが、新型コロナウイルスの感染が止まったわけではなく、第2波、第3波の懸念も取りざたされる。一時の安ど感から対策の手を緩めれば、自粛、休業を繰り返すことになる。むしろ、わずかながらでも落ち着きを見せているこのときに、先行きの危機を予測し、感染拡大を防ぐ積極的な攻めの手立てを講じておくべきである。再びの社会・経済活動のストップは許されない──。そんな危機意識のもと、6月18日に日本記者クラブで経済、医療、労働、スポーツ・文化、自治体首長、メデイアなど各界からの100人を超える有識者が共同で、経済社会活動の正常化に向けた「積極的感染防止戦略」の緊急提言を発表した。提言の発表は湯崎英彦・広島県知事、小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹、富山和彦・経営共創基盤CEOの3氏が代表してリモート会見で行われた。

日本記者クラブで行われたリモート会見

提言は、自粛や休業を繰り返す「受け身」の対応から積極的な「攻め」の感染防止戦略をとることで国民にいま最も必要な安心感が生まれ、経済社会の正常化を実現できるとの考えを軸にまとめられた。柱は医療提供体制の機動的増強と、検査+接触者調査+治療・療養体制の大幅な増強である。医療提供体制については、重症者のためのICU などの設備増強に加え、防護服などの医療物資の十分な提供、医療機関への経営面を含めた支援を求めている。そのうえで、幅広く迅速な検査によって感染者を早期に発見し、重症化防止のための治療を早期に施すとともに、接触者調査によって感染者を幅広く発見し、軽症者・無症状者についてはホテルなどで人との接触を減らしつつ治療・療養に入ることによって市中感染を抑止するべきとしている。

そのうえで、インフィルエンザの発生とコロナ第2波に備え、9月末までに一日10万件、11月末までに一日20万件の検査と診察ができるように検査・医療体制を早急に整備するべきとしている。

また検査については、クラスター感染に脆弱な医療従事者、介護施設・障害福祉施設従事者についての重点的な検査を求め、海外渡航制限緩和に伴う入国、出国者への水際対策としての検査の徹底化で、「鎖国」を回避するべきとしている。

「各界の著名人が賛同しているオールジャパンの提言であり、医療に負担をかけないように感染拡大を防ぎ、経済を正常化するためのロジステックをいまのうちに作ることを考えてほしいが主旨だ」

湯崎広島県知事

「国民は一生懸命に感染予防に取り組んでいる。今は政府が何をしてくれるのかを示すことが大事だ。これまでは防戦一方だったが、落ち着きを見せている今こそ反転攻勢の攻めの戦略に出る時。命と経済を救う両立を目指さなくてはならない。コストも第2波が起こってしまったときにかかるよりも今取り組む対策のコストのほうがはるかに少なくて済む」

小林慶一郎氏

「ウイズ・コロナの覚悟のもと長期戦で取り組まなくてはならない。リーマンショックの時とは違い、ローカルサービス産業、飲食業、エンターテイメント、スポーツなど中小企業中心の産業基盤が壊れている。事業の継続性が危ぶまれる中、命、人生が壊れていくのを防がなくてはならない。将来への希望をつなぐ、予測活動性を示すことが大事だ。検査にしても受けたい人が受けられる体制を整備することが必要」

富山和彦氏