未就学児の親からSOSの悲鳴が響く コロナ禍の自宅幽閉、密室育児で親子ともに疲弊
緊急アンケートで浮き彫り
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための社会・経済活動への自粛要請は依然と続いているが、長期化する中で各方面からそれこそ悲鳴に近い苦悶の声が上がっている。普段は何気なく見過ごされていた社会のひずみが一挙に噴き出した形だ。その一つが、小学校未就学児(0〜6歳)を持つ家庭の崩壊現象だ。「自宅幽閉」「密室育児」に陥った家庭からのSOSがあふれるように寄せられている。NPO法人全国認定こども園協会、全国私立保育園連盟などが緊急アンケート調査を行い、発表した。
緊急事態宣言の発令や外出自粛などにより、約70%が「子供との過ごし方に悩み」、約54%と半数以上が「親の心身の疲弊」を訴え、また、「減収や失職となり生活や育児の費用が心配」も20%を超える。テレワークも推奨されたが、現実には、「仕事に集中できない」の回答は多く、家庭内での仕事と育児の両立の難しさが浮き彫りになった。
特に、幼児教育・保育施設の休園や利用制限が突然始まり、公園も利用できなくなり、密室育児のもとでの子供たちの生活への変化、心配を挙げる声が多い。「生活の不規則」「じん麻疹、吃音の症状」「親への暴言、乱暴、癇癪」「4歳児の赤ちゃん帰り」「集中力の低下」等など、子供の心身への影響を語る。また、子連れに対する社会の冷ややかなまなざしが表に出て「このご時世に子供と外出するなんて」という圧力が親に不安や恐怖感を抱かせていることも明らかになった。さらに、これまでも指摘されてきた母親への育児負担の集中が、自宅幽閉生活の中で一層顕著になり、三食の用意、買い物、子供の世話などで「ただ疲れる」との悲鳴に近いため息も。そして、親自身が「イライラして怒りっぽくなった」「子供を叱ることが増えた」「孤立感や閉塞感を感じた」など、未知の感染症への恐怖を感じながらの育児に強い不安感や感情の揺れを抱いていることをうかがわせた。中には「お酒やサプリに依存」「泣き続けた」「夫に増悪感を抱くように」「一家心中という言葉が頭をよぎった」などという深刻な声さえも漏れてきた。
経済的な支援を求める声も多かった。収入が減る一方で出費が増えることからの生活不安を訴える。特別定額給付金についても、遅すぎるとの指摘とともに、夫婦仲が良くなく、生活費を十分にもらえていない母子がいるのに世帯主に一括に渡すのはおかしい、の声も。さらに休園や登園自粛中にもかかわらず保育料や給食費、教材費、冷暖房費などを支払わねばならないことに対する不満や納得のいかない気持ちも多く吐露された。
施設の利用自粛や休園などに就いても、「親一人で在宅勤務の日に一歳児を見ながらの勤務は不可能で、勤務を休むことになった」「園児の密集を避けるよう曜日を振り分けるなどして週のうち数日程度は開園してほしい」「ウイルスの危険性を考慮しても休園や休校や登園自粛が続くことによる弊害のほうが大きいのでは」など施設の一律的な休園などへの不満がよせられた。中でも公園の閉鎖に対する不満は強く「公園でルールを作って遊具を開放してほしい」「今まで学校や保育園へ行っていた子供たちを長期間どこへもいけない状況にしたのは無理があった」。そして「1LDKに家族4人、狭くて夫はリモート会議を玄関でやっている。子供を外に連れ出してほしいといわれるも、外出すれば知らない高齢者に怒られる」はまさに天を仰ぎたくもなる。
こうした子育て家庭からのSOSの噴出に対して、王寺直子・全国認定こども園協会副代表理事は「非常事態における保育の必要性を柔軟に判断し、親のレスパイトのための預かり保育、相談や支援の提供などを検討すべき」とし、「乳幼児を育てる過程で、在宅勤務を無理なく行える環境があるかを雇用主と保育施設の両側から確認し必要なサポートの提供を工夫するべき」と在宅勤務への課題を語る。
NPO法人子育てひろば全国連絡協議会の奥山千鶴子・理事長も子供たちの成長・発達に悪影響を残さないための対応が大切で「短時間保育や園庭利用を認めるなどすべての子どもの発達保障の観点から支援を検討してほしいし、健やかな発達に大切な遊びの機会の保障も必要」と強調。
さらに就学前の制度政策が福祉、保健、教育、子育て支援で、内閣府、厚労省、文科省というように縦割りのバラバラで、司令塔が不在という現状が、保護者の不平等感、不信感を生むことになっているとし、感染症対策が引き続き求められる中、縦割りを超えた統合的な対応が必要になると、行政対応の改善も促した。
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