2020.5.30

エンタメ業界がコロナで存亡の危機に

市場規模の80%が喪失 守れるか感動のライフライン

コンサート、演劇、スポーツなどライブ・エンタテイメント業界が新型コロナウイルスで存亡の危機に立たされている。果たしてライブ・エンタメ業界は再起できるのか。エンタメ業界のダメージ、苦衷をぴあ社長の矢内廣氏が日本記者クラブのオンライン会見で語った。

ぴあ総研の調査によると、2月〜5月までに中止・延期などにより売り上げがゼロもしくは減少した講演・試合の総数は19万8000本に上り、入場できなくなった観客総数は延べ1億1000万人、これによって失った入場料の総額は3615億円に達するという。ライブ・エンタメの年間市場規模(入場料売り上げ)は約9000億円とされているので、すでに4か月間で年間市場の41%が失われたことになる。プロ野球、サッカーなどがこれから徐々に開催されていくだろうが、無観客など制約は多く、コロナ禍前に戻るのは難しい。6月から来年1月までの中止・延期の総数は23万4000本、損失額も3200億円と推計している。2月から来年1月まで1年間で、損失額は6900億円にのぼり、実に今年は年間市場の77%が失われることになる。ちなみに損失のジャンル別内訳は、音楽系約3300億円、演劇・ステージ系約1600億円、スポーツ系約1300億円、イベント系その他約700億円──。

矢内氏は「この市場規模には物販・飲食・企業協賛など開催に伴う周辺売り上げは含まれておらず、これらを含めた全市場規模はチケット売り上げの10倍以上の10兆円を超える」としており、エンタメ市場にかかわる業種は多く、すそ野の広いのが特徴だ。エンタメ市場の低迷は、個人消費の低迷という経済的影響につながるわけだ。一方、エンタメ企業は小規模企業が多く、フリーランスら個人も多い。それだけに公演・試合の中止は直ちに倒産、失業に直結する。「才能のある人材の流失も懸念され、コロナ禍が長引くと再び立ち上がれない人が続出する恐れも」(矢内氏)と、業界の先行きを不安視する。

ライブ・エンタメ市場は、この10年間で2倍以上に増えたとされ、「波及効果の大きさからみてもいまや日本の基幹産業と位置付けることができる。しかも人々に勇気や元気、夢を与えることのできる感動のライフラインでもある。この灯を消すことがあってはならない」(同)。その意味からも今度の第2次補正予算による経済対策には大きな期待をかけており、「とくに10兆円の予備費の活用によるエンタメ業界支援のスキームを作ってほしい」と、止血だけではない輸血の重要性を政府に要請している。

市場規模が大きく、すそ野の広いエンタメ業界ではあるが、そのために逆に組織も、人も横断的なまとまりに欠けるのも事実。経済支援策への要望もひとつの塊としてのエネルギーにならず、見落される危惧もある。コト業界の代表としてのエンタメ業界が立ち直りのロードマップをどう描けるか、注目と期待は大きい。

日本記者クラブでオンライン会見を行うぴあ社長・矢内廣 氏
会見資料より「新型コロナウイルスによるライブ・エンタテインメント業界へのダメージについて」