日頃から書きなぐっていた取材ノートや備忘メモに埋もれていた諸々を拾い、不定期で自由気ままに綴ってみようと思います。落ちこぼれた種から何か芽が出てくるかな——。

古川興一ブログ「落ち穂ひろい」
落ち穂ひろい |  2020.5.23

新型コロナによる世界経済の損失8.8兆ドル、GDPの9.7%相当と甚大な影響

政策支援で30〜40%軽減も可能——アジア開発銀行の分析、推定

新型コロナウイルス拡大による経済への影響が深刻化する中、アジア開発銀行(ADB)は、コロナ感染のパンデミックによる経済損失は5.8兆ドル(下限)から8.8兆ドル(上限)に上るとの分析結果をまとめた。これは世界のGDP(国内総生産)の6.4%から9.7%に相当する甚大なもので、速やかな終息、迅速な経済対策が待たれる。ADR は4月3日に同様の経済見通しを発表しているが、そこでの世界全体の経済的影響額は2.0兆ドルから4.1兆ドルの損失と算出していた。しかし今度(5月15日)の分析・推定はこれを2倍超も上回っており、コロナ感染が短期間で蔓延し、世界経済に予想以上の深刻なダメージを与えつつあることを裏付けた。ADRの澤田康幸・チーフエコノミストがこのほど日本記者クラブのオンライン会見で語った。

同分析は400万人以上に上る新型コロナウイルス感染者を抱える96のパンデミックの影響を受けた国や地域を対象にしたもので、観光、消費、投資、貿易と生産リンケージへの影響に加えて、貿易コストの増加、サプライチエーンの寸断、各国の政策対応などを踏まえるとともに、コロナ感染の終息期間を3か月の短期(下限)、6か月の長期(上限)のシナリオを想定し、推定している。

経済損失を国別にみると、米国が1.5兆ドルから2.2兆ドルと最も大きく、これはGDPの7.1%から10.7%に相当、中国も1.08兆ドル(GDP7.5%)から1.6兆ドル(GDP 11.2%)と大きな損失を蒙むる。日本も3245億ドル(GDP 5.9%)から4910億ドル(GDP8.9%)であり、決して小さくはない。また、世界の雇用の減少は1億5800万人から2億4200万人に及び、労働所得は1.2兆ドルから1.8兆ドルの減少を見込む。中国は雇用が6300万人から9500万人、労働所得が2535億ドルから3860億ドルの大きな減少。米国は900万人から1300万人、労働所得は4027億ドルから6112億ドルの減少だ。日本は雇用が360万人から550万人、労働所得が606億ドルから922億ドルの減少が見込まれている。

同分析でもう一つ注目されるのが、各国政府のコロナウイルス対応である。所得や収益の損失を補填するための財政、金融の直接支援で経済的影響をどの程度カバー、軽減できるかをはじき出している。それによると経済的影響を30%から40%ほど軽減し、世界経済の損失を4.1兆ドル(GDP4.5%)から5.4兆ドル(GDP5.9%)まで引き下げることができるとしている。日本も政策効果で1274億ドル(GDP 2.3%)、から952億ドル(GDP1.7%)までの損失に引き下げられると推定している。

今度の分析で、新型コロナウイルスの及ぼす経済的影響がいかに大きいかが明らかになるとともに、この経済的打撃を軽減するための政策介入の役割がいかに大きく、重要であるかも示したといえる。澤田氏は「迅速なパンデミックの封じ込めが最重要だが、終息が長引くと経済封鎖などが金融危機につながる恐れがある」とし「長期の経済的悪影響を避けるためにも政府による所得補償や雇用保護が不可欠」と語った。

日本記者クラブのオンライン会見を行うアジア開発銀行の澤田康幸氏
澤田康幸(アジア開発銀行)「新型コロナウイルス感染症の経済的影響に係る改訂評価」より引用
澤田康幸(アジア開発銀行)「新型コロナウイルス感染症の経済的影響に係る改訂評価」より引用