日頃から書きなぐっていた取材ノートや備忘メモに埋もれていた諸々を拾い、不定期で自由気ままに綴ってみようと思います。落ちこぼれた種から何か芽が出てくるかな——。

 

輿水肇さんが『みどりの学術賞』受賞

屋上緑化の普及も輿水さんあればこそ


嬉しいニュースが飛び込んできた。都市緑化機構の理事長、輿水肇さんが内閣府から「みどりの学術賞」を受賞したのだ。授賞式は4月26日に行われるが、天皇・皇后両陛下のご臨席のもと内閣総理大臣から授与される格式の高い、権威ある賞だ。受賞の理由は『都市における植栽基盤整備技術の開発』に関する功績。まあ、タイトルだけではなかなか理解が難しいが、屋上緑化など都市の人工地盤緑化の技術開発といえばハハーンとうなずく人も多いだろう。そう、輿水さんは造園緑地分野では日本造園学会長など様々な要職を歴任しその名を知られるが、建築分野においても輿水さんの存在感は小さくない。ずばり、今は当たり前のようになった屋上緑化のフロンテイアだからだ。

平成元年に『屋上開発研究会』というユニークな名前の団体が設立された。その名の通り、建築物の屋上を開発しようという業界組織で、土一升、金一升と言われたバブルの頃、未利用の屋上空間はもったいない、有効に利活用しようとの想いからだった。建設省の指導も得て、建築、造園、緑化、防水など関係企業50社以上が参加しての船出だった。新しもの好きの小生も、会員の末席を汚し、当初は事務局として使い走りをした。ここにおいて、屋上開発の技術的、理論的な支柱の役割を担っていただき、会の副会長をも務めていただいたのが、明治大学教授の輿水さんだった。

屋上開発のメニューはいろいろ構想されたが、中心はやはり緑化だった。特に、地球温暖化、都市景観が叫ばれ、CO2の吸収源として緑が重要視されるなか、緑の少ない都市の緑化対策として屋上緑化が一躍、脚光を浴びた。東京都を始め多くの自冶体で屋上緑化が義務づけられもした。屋上研の活動も注目を集めた。

だが、屋上緑化と一口に言うが、実際には難問がいくつもあった。学問・業界領域が違うのだ。屋上は建築、緑化は緑地。造園分野だ。屋上を緑化すると言っても、建築構造の面から、重量や防水、さらに安全、防風などの問題が出てくる。緑化も、土壌、樹種、防根,潅水・排水対策が重要になる等々。ある意味、建築と造園の融合を如何に図るかという命題を突きつけたのがこの屋上緑化だった。特に軽量化が要求される屋上において自然土壌だけでなく、人工軽量土壌をいかに開発、利用するか、屋上緑化にふさわしい植栽基盤のあり方そして樹種は何か、などといった難問の数々だ。だが当時、屋上と言う人工地盤での緑化などの研究に取り組んでいる学者はほとんどおらず、ただひとり海外実例なども調べ、研究論文を発表していたのが輿水さんだった。輿水さんなしに、現在のような屋上緑化の普及はなかったと言っても過言ではない。今や、建築緑化、環境建築の名で、建築と緑は不即不離の関係にある。その先鞭をつけたのが屋上緑化だ。

平成のスタートと共に屋上緑化が始まり、平成最後の年に、その功績が顕彰される。そして、受賞記念講演会は新元号での6月22日という。こんな輝かしい記念の賞なんてそうはざらにない。いつも謙虚で偉ぶらず人望の篤い輿水さん、本当におめでとうございます。

原宿の丘の屋上菜園(「屋上開発研究会創立20周年記念誌」より)
原宿の丘の屋上ビオトープ(「屋上開発研究会創立20周年記念誌」より)
公益財団法人都市緑化機構 代表理事・理事長 輿水肇(こしみず・はじめ)氏

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