2017.12.1

増加するヒートショックを防げ! 設備機器メーカーで新提案が加速

低温注意喚起、湯はり連動暖房、ミストシャワー、IoT見守りなど

さらなる認知・理解向上が課題
IoT化でのサービスの進化にも期待

風呂まわりの住宅設備機器メーカーがヒートショックの予防に向け提案を強化しているなかで、徐々に消費者のヒートショックに対する認知度は高まってきているようだ。

リンナイの中尾公厚 営業本部 営業企画部 部長によると、「毎秋に行うガス展では、ヒートショックの提案コーナーに立ち止まる人がここ最近は増えてきた。報道などによる影響で徐々に認知が浸透してきている実感がある」と話す。

実際、リンナイが全国の20~70代の男女960人に行った調査でも「ヒートショック」という言葉を聞いたことがあると回答した人は約7割と認知は進んできている。一方で、詳細については理解できていない人が4割いる。それだけに、認知だけでなくヒートショックを引き起こす要因と対策などについても、消費者の理解を促していくことが、ヒートショック対策の設備機器の販売を伸ばしていくうえで、重要になってきそうだ。特に理解を促すメインターゲットは、高齢の親を持つ中高年。在来の寒い浴室で入浴する親を心配してヒートショック対策の設備機器を購入する人が増えている。

「ヒートショック」年代別認知度(出典:リンナイ)

消費者への認知・理解の促進に加え、さらなるヒートショック対策の付加価値提案も重要だ。その手法として今後注目を浴びそうなのがIoT。風呂まわりの設備機器をIoT化させることでヒートショック対策のサービスをさらに進化させていける可能性がある。

すでに、リンナイ・ノーリツ・パーパスは大阪ガスを通じて販売している一部の浴室暖房乾燥機や給湯器などの製品をIoT化している。例えば、機器の遠隔操作やガス・お湯の使用量の見える化に加え、浴室の室温が低い場合はスマホに知らせ、ヒートショックへの注意を促すなどのサービスを提供している。各メーカーの設備機器を通じて得たデータについては、大阪ガスが自社のサーバーに蓄積。今後、データを活用したサービスの提供も検討している。

リンナイはこれとは別に、自社単独でのIoT化の取組みを進めている。今年10月には、スマートフォンアプリ「どこでもリンナイアプリ」の提供を開始。一部の無線LAN対応製品に限り、屋内や外出先から給湯・暖房リモコンを操作できるサービスを提供する。また、離れて暮らす家族宅の給湯・暖房機器が「どこでもリンナイアプリ」に対応していれば、離れて暮らす家族が給湯器を使用すると、翌日朝8時にスマートフォンに知らせるサービスも提供。この機能を利用すれば、例えば、高齢の親の健康を見守れる。

リンナイはスマートフォンアプリ「どこでもリンナイアプリ」の提供を開始。屋内や外出先から給湯・暖房リモコンを操作できるサービスや、離れて暮らす家族を見守れるサービスを行う

一方で、ヒートショック対策という観点から言えば、浴室・脱衣室で異変があった時にすぐに家族などに知らせ、対応を取れるようにすることもIoTを活用すれば可能になるだろう。リンナイではそういったサービスの提供に関心を持っていながらも、「具体的なサービスの提供には他の事業者との連携も含めて考えていかなくてはいけない。ただし、高齢者の中には見守りを“見張られている”と感じる人もいるため、そういった心情面にも配慮していく必要がある」(中尾公厚 営業本部営業企画部 部長)とし、今後の課題と考えている。

このほか、パーパスもIoT化への準備を進めている。「将来的にサービスを提供していく際には、エネルギー事業者向けに提供しているクラウドコンピューティングシステムのサービス『クラウドAZタワー』のノウハウを活用していける」とパーパスの鈴木孝之 経営企画部 営業企画グループ グループリーダーは自信を見せる。また、風呂まわりの設備機器とスマートスピーカーとの連携にも関心を示しており、「今後、どこまで普及していくかによるが、当然、技術的に対応していく必要がある」(同)としている。

IoT化することでエネルギー使用量の見える化や遠隔操作だけでなく、生活データの収集も可能になる。脱衣室・浴室の生活データを活用し、これまでにないサービスを創出していける可能性があるだけに、風呂まわり設備機器のIoT化によるヒートショック予防の取り組みにも今後ますます注目が集まっていきそうだ。