国土交通省は、空き家を用途変更して活用しやすくしたり、建築物で内装に木を利用しやすくするために、建築基準法を改正し規制緩和を図る。年度内に内容を取りまとめる予定だ。

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2014年以来の大きな見直し

国土交通省は「社会資本整備審議会 第40回建築分科会及び第13回建築基準制度部会合同会議」を開催し、空き家などのストック活用や建築物への木の利用の促進、建築物の安全性を確保するための適切なメンテナンスの促進に向け、建築基準見直しに向けての検討に入った。年度内に内容を取りまとめ、早期の法改正を目指す。

2012年に国土交通大臣が社会資本整備審議会に対して行った諮問「今後の建築基準制度のあり方について」への答申により、近年、建築行政に関して2度の法改正が行われている。ひとつは、2013年の第一次答申で「耐震改修促進法」が改正。一定の建築物に対し、耐震診断の義務付けや、耐震改修計画の認定で容積率等の緩和を図る措置などが講じられた。また、2014年の第二次答申により、建築基準法が改正され、木造3階建の学校が可能になるなどの規制の合理化が行われた。

そして、今回、社会資本整備審議会は第三次の答申に向けて審議を開始。建築基準法の改正を念頭に年度内を目途に議論の取りまとめを目指す。

空き家活用の促進などで建築基準法を改正

「社会資本整備審議会 第40回建築分科会及び第13回建築基準制度部会合同会議」が開催され、建築基準法の見直しに向けての検討に入った

共同住宅の老人ホーム化などストック活用で用途変更しやすく

同審議会では具体的には、「ストック活用の促進」「木造建築に関する多様なニーズへの対応」「適切な維持管理・更新による建築物の安全性の確保」を3大テーマに検討を行っていく。

既存ストックは年々積み上がってきており、築30年を超えるものは5割を超える。また、空き家の増加も深刻化している。このため、今後、空き家も含めたストック活用を促進していく必要がある。だが、既存不適格の問題で改修や用途変更が困難だったり、現行の基準に適合させるために大規模な改修工事が必要になる場合もある。このため、国は用途変更のしやすさも含めて既存ストックの活用を促すような措置を検討していく。

用途変更については、高齢化が進行する中で、老人ホームなどの高齢者施設の需要がますます高まってきている。これに対して、例えば、共同住宅のストックを活用して、高齢者施設に用途変更するといった可能性も考えられる。

だが、共同住宅と老人ホームでは、容積率に参入する床面積の取り扱いが異なることが用途変更の障害になっている。このため、共同住宅などのストックを老人ホームなどに用途変更して活用しやすいようにする措置も検討する。

一方で、一時的な用途でストックを活用できるのではないかという考え方もある。例えば、首都直下地震や南海トラフ地震では大量の需要が見込まれる応急仮設住宅として活用する。また、2020年の東京オリンピックで必要となる多くの仮設の建築物にストックを活用できる可能性がある。このため、一時的なニーズでストックを活用する場合に、用途変更を行いやすくしたり、仮設建築物の存続期間を通常より延長できるような措置も検討の対象とする。

既存ストックの仮設住宅への活用については、委員からは「空き家の活用だけでは足りない。事業系の建物の活用も検討する必要がある。例えば、都心にある大学などの活用も考えて欲しい」(芝浦工業大学建築学部・南一誠教授)との声も上がった。対して、国土交通省は検討に前向きな姿勢を示している。

空き家活用の促進などで建築基準法を改正

2017年1月1日現在、「住宅(民間・公共)」の床面積は約57億㎡強、「法人等の非住宅建築物」の床面積は約20億㎡弱となっており、どちらも微増傾向にある。またストックの約5割が建築後30年以上経過している

内装などで木材のあらわし提案が行いやすくなる可能性も

社会資本整備審議会では、住宅などの建築物に木材を利用しやすくする措置も検討していく。これまでも、国は建築物への木材利用の禁止規定や、木材を利用した柱・梁などの技術基準の見直しを行っている。一方で、大規模な建築物や防火地域の建築物については、耐火構造を要求している。結果として、木造建築では耐火構造にするためには、石膏ボードなどによる防火被覆が必要であり、木材の良さを前面に出したデザインが難しい部分もあるというのが実情だ。このため、建築物の内装などに木材を活かしやすくする措置も検討する。

建築物の安全面では規制の強化も倉庫や市街地の防火対策を推進

建築基準法の改正により、ストック活用の促進、建築物への木材の利用促進については規制緩和を図るが、一方で建築物の安全性の面では規制の強化を検討する。

今年2月、埼玉県三芳町のアスクルの倉庫で大規模な火災があった。この火災では多数の防火シャッターの閉鎖障害が火災拡大の要因のひとつとして指摘されており、今後の再発防止策として、事業者自らが防火シャッターの適切な維持管理を行うことが必要だと有識者などから指摘されている。このため、大規模倉庫などについて、劣化・損傷の観点だけでなく、防火上の観点からも適切に日常的なメンテナンスが実施されるためには、どのような措置が考えられるか検討していく。

また、昨年12月に新潟県糸魚川市での大規模な市街地火災も問題となったが、市街地大火を防ぐためには、面的に耐火性能の高い建築物への建替えの促進が重要。

だが、建替えにつながる建蔽率の緩和措置については、防火地域の耐火建築物のみが対象となっており、市街地全体の防火性能が向上しないまま放置される傾向にある。このため、市街地全体の防火性能の向上につながる建替えや防火改修といった面的な取組を促進するための措置も考えていく。