「脱・都心」ならではの付加価値を

テレワークの普及で通勤時間を考慮する必要性が減ったことで、首都圏郊外やさらに都心から離れた「脱・都心」の戸建分譲に人気が集まっている。自然環境が豊かで、より広い居住環境を確保でき、価格も割安であることなどが人気の理由だ。テレワークの実施率は1回目の緊急事態宣言時よりも落ちてはいるが一定程度は定着する公算が高く、それに伴い「脱・都心」の住宅市場は今後一層広がりを見せそうだ。
「脱・都心」の住宅市場の中でも人気の高いエリアはターミナル駅周辺だ。駅ビルや大型の商業施設、娯楽施設、公共施設などがあり、都心まで出なくても買い物や余暇を過ごすことができて利便性が高いためだ。
しかし、ターミナル駅周辺は用地の取得競争が激化しており、住宅事業者はターミナル駅周辺以外にも目を向けた戸建分譲開発の必要性が出てきている。ただし、ターミナル駅周辺以外のエリアは利便性が劣るため、利便性ではない付加価値の訴求に力を入れる必要があるだろう。特に、都心よりも比較的中大規模な開発が可能な「脱・都心」戸建分譲ならではの付加価値の訴求に期待が持てる。
例えば、コミュニティの醸成だ。分譲住宅を購入する一次取得者は子育て世帯が多いだけに、子どもも含めた家族ぐるみのコミュニティ作りは大きな付加価値になる。一方で、コロナ禍では対面でのイベントを実施することが困難であるというのが実情だが、例えば、ポラスグループではオンラインでのコミュニティ醸成を支援しており、こうした取り組みを参考にすることもできそうだ。
また、都心に比べて広い用地を確保できる利点を生かして、家庭菜園を設けることも付加価値になりそうだ。東京大学などの調査によると、家庭菜園実施者は非実施者に比べて精神的健康度が2倍高いという調査もあり、コロナ禍で調子を崩しがちなメンタルヘルスの維持・増進を訴求できるだろう。
さらには、分譲地内に住民が利用できるテレワーク施設を設けることも付加価値になる。自宅では仕事に集中できない人も多いことから、郊外でも駅前などにシェアオフィスが増えているが、分譲地内に住民専用の施設があればニーズは高そうだ。
コミュニティや家庭菜園、テレワーク施設など、「脱・都心」戸建分譲ならではの付加価値づくりは多くあるだろう。今後、住宅事業者には様々な付加価値づくりがより求められてきそうだ。
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「中古マンションを購入してリノベーション」ということが住まいの選択肢の一つとして定着する一方で、戸建住宅のリノベーションについては、ニーズはあるものの工事の難しさ、性能の確保、コストアップなどのハードルも多く普及には至っていない。しかしここにきて建材メーカーなどが中心となり戸建住宅の性能向上リノベーションを支援する動きが活発化している。日本では戸建住宅の方がマンションよりもストック数は多く、新築市場が縮小していく中で有望市場であることは間違いない。戸建リノベの収益化に向け、どのようなアプローチが有効なのか。トップランナーの事業者の動きからヒントが見えてくる。
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