2017.9.8

国総研、建物外皮の劣化リスク抑制でガイドライン策定

劣化リスク評価法や適切な納め方などを明示 事業者の意識、技術レベルを高め不具合を未然に防止

国土技術政策総合研究所(国総研)は、木造住宅の劣化のしやすさと対策を解説したガイドラインを公表した。住まいの耐久性を確保する上で重要な役割を果たす外皮構造の適切な納め方を示すことで、とくに防水事故の発生リスクを極小化していきたい考えだ。

住宅瑕疵担保責任保険法人の報告によると、瑕疵保険の事故のうち、防水事故の割合は9割を超えている。漏水・結露などにより躯体内部に雨水が留まることで、木材などの腐朽が進み、住まいの耐久性を著しく低下させてしまう。雨水浸入および結露対策は、木造住宅の耐久性を確保する上で極めて重要な課題となる。だが、実際には、これまで木造住宅の耐久性と外皮構造の関連性に焦点を当てた研究は少ないのが実情であった。そこで、国総研は、2011年度から2015年度まで、大学、検査機関、住宅供給団体、工事団体、材料生産団体など合計24機関の参加を得て、雨水浸入や結露に伴う劣化状態調査や、散水検証試験などの各種試験を実施し、共同研究を進めてきた。今回公表された報告書(国総研資料第975号)は、この共同研究の成果をまとめたもの。雨水浸入、結露発生、およびこれらに伴う劣化リスクを明らかにしたほか、劣化リスク評価の方法や、劣化リスクを抑制するための外皮の設計・施工法などを示した。報告書は、造り手向けの【リスク分析・評価ガイドライン】、【設計・施工ガイドライン】と、住まい手向けの【長持ち住宅ガイドライン】で構成される。造り手向けの【リスク分析・評価ガイドライン】では、木造住宅を建築する際のリスク要因とその評価方法について提示している。例えば、雨水浸入事故が多発する工事業種が異なる取り合い部などの具体例などを抽出し、専門業種外の職種の関与による初歩的な内容の不適切施工が、多くの雨漏り事故の要因となっていることなどを指摘した。造り手向けの【設計・施工ガイドライン】では、住まいの耐久性を十分に確保するため、設計・施工時に役立つ具体的な雨仕舞いや、防水工事の納まりなどについて提案している。例えば、これまでの調査で、木造住宅で最も漏水リスクの高い部位であることが明らかになっている「開口部まわり」や「屋根・外壁取り合い部」「バルコニー」について、劣化対策上望ましい納まりを検討し、推奨納まり図(案)などを示した。


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